時空間秩序・生命物理研究室

 

京都大学 理学研究科 物理学第一教室
時空間秩序・生命物理研究室 講師
市川正敏  博士(理学)

研究テーマ: ソフトマター物理、非線形・非平衡の物理、生命物理
email: ichi<a>scphys.kyoto-u.ac.jp
Access: 理学部5号館 234号室

 

市川よりみなさんへ

 この研究室はソフトマターや非線形・非平衡の物理、生命現象の物理を研究しています。敢えて一言で表すと、「生き物らしさは何処から来るか?」を研究しているラボであると言えます。何をもって生き物らしいと感じるか、思うかは、人の数だけ見方が異なるでしょう。その切り口の数だけ研究テーマがあります。生き物そのものを対象としたり、生き物らしさを抽出したモデル実験系で研究を行ったり、分子や相の物理化学的挙動から生命現象を説明しても良いでしょう。生き物から離れてソフトマターや非平衡系の課題に取り組むのもありです。我々は、生き物を研究する事を目的とはしていません。その様な非線形非平衡なシステムにおける物理学的な課題を解決・発見する事を主眼にしつつ、物理、すなわち物の理で理解できる分野を切り開いていく事を目的としています。
 10年、20年後に新しい物理領域となるような研究分野を一緒に作って行こう、或いは自分が創る!という方々を歓迎します。

 具体的な研究内容については、HPの研究内容や論文概要を読んでみて下さい。学部学生諸氏は研究室に来て院生達と議論するのが最も参考&勉強になると思います。

 

 

論文とその概要

 最近の論文についての概要です。しばらく更新サボっていましたが更新しました。
 サーバの引越しが2回有り、旧ページ群は再公開状態にはなっていません。
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"Growth of self-integrated atomic quantum wires and junctions of a Mott semiconductor"
Tomoya Asaba, Lang Peng, Takahiro Ono, Satoru Akutagawa, Ibuki Tanaka, Hinako Murayama, Shota Suetsugu, Aleksandar Razpopov, Yuichi Kasahara, Takahito Terashima, YuhkI Kohsaka, Takasada Shibauchi, Masatoshi Ichikawa, Roser Valenti, Shin-ichi Sasa, and Yuji Matsuda,
Science Advances 9, eabq5561/1-9 (2023)
DOI:10.1126/sciadv.abq5561
1ナノメートル半導体量子細線の作製に成功@京都大学
太さ1ナノメートル程度のルテニウム塩化物半導体細線の形成と新規な形成メカニズムを提案した論文です。ルテニウム塩化物の低次元量子物性は学術的に大変に面白いのですが、それらは松田先生たちのこれまでの研究を参照して下さい。本論文は、隣の量子凝縮物性研究室/松田祐司教授及びそのプロジェクトが主催する研究で、実験データの解釈等についてお手伝いしました。筆頭著者の浅場先生は本当に隣の部屋で、部屋が隣だったから通りすがりに聞かれた案件です。さて、半導体集積回路の微細加工技術は現代のIT社会を支える重要な要素です。半導体製造プロセスの技術進展のカギは微細な導線やトランジスタ・ダイオードを如何にして密集させて形成するかにかかっています。形成方法を極論すると、細い電子線やレーザー光で描くか、カーボンナノチューブなどの細い構造体を並べるかの2種類です。原状は前者が大勢となっていますが、今後の更なる技術進展の為に後者を含めて新しい形成手法が模索されています。本研究は、ルテニウム塩化物の1~数結晶格子厚の2次元シートが形成される、その条件より更に薄い濃度域で数結晶格子幅のナノ細線のパターンが形成される事を明らかにしました。パターンは等間隔の縞模様やリング、Y字X字の結節点など回路形成にも役立ちそうな多様なものが創り出されました。実験状況が高温でかつミリ秒オーダーの短時間プロセスで、原子が見える領域の電子顕微鏡やSTMでしか観察出来ない事から、パターン形成の動力学を現在の実験技術で調べる術は無く、メカニズムを実験で証明する決め手がありません。一方で、多数の電子顕微鏡画像を並べると、濃い物質源から波紋の様に伝搬している同心円的細線や、その波紋が行き止まりや衝突の結果として順番に並んだ様なパターン、伝搬の結果か伝搬せずに相が分離したのか判別が付かないが高度に等間隔に並んだ縞模様など、いくつかの特徴が見て取れます。これらは、反応拡散系という空間パターンを自発的に形成するシステムの条件を僅かに変化させた時に得られるパターンの変化と大変似ています。自発的パターン形成として有名なチューリングパターンの仲間となります。先の2種類に加えて、反応拡散動力学を利用した自発的なパターン形成・制御という第3の提案を、先端プロセスをも部分的に凌ぐ細線幅と線間隔の実現と共に示した研究となっています。


"Simple dynamics underlying the survival behaviors of ciliates,"
Takuya Ohmura, Yukinori Nishigami, Masatoshi Ichikawa,
Biophysics and Physicobiology 19, e190026/1-10 (2022)
DOI https://doi.org/10.2142/biophysico.bppb-v19.0026
遊泳微生物がもつ運動装置である繊毛が固体壁面にぶつかると繊毛打が制限を受け、細胞全体の遊泳力の非対称性が生じる。その様な非対称遊泳力と細胞形状は、流体力学的相互作用によって、壁面でのスライディング運動を導く。すると細胞は壁面に集積する。この運動制御メカニズムをもつ繊毛虫テトラヒメナやゾウリムシについて、生態と形状最適化の視点から議論したレビュー論文です。繊毛長と細胞形状は、スライディング条件に在りつつも幾らかの摂動で離陸してしまう位の条件です。壁を好みつつも居つきすぎず、増え過ぎたら互いにぶつかり離陸して新天地を目指す。そんな生態が最適化の末に選ばれたことが伺えます。

 

"Motion of a swimming droplet under external perturbations: A model-based approach,"
Saori Suda, Tomoharu Suda, Takuya Ohmura, Masatoshi Ichikawa
Physical Review E, 106, 034610/1-8 (2022)
DOI: 10.1103/PhysRevE.106.034610
彷徨う自己駆動液滴は受けたゆらぎを増幅しつつ反映する事を常微分方程式系の数値シミュレーションで明らかにしました。マランゴニ対流で推進するタイプの自己駆動液滴の運動について、小サイズから大サイズまで大きさについて比較すると、半径50~100μmあたりを転移点として、pullerからpusherに遊泳モードが転移し、それに伴って直進運動から湾曲運動へと変化する事が先の研究で示されました。しかし、パルス的な入力に対しての数値計算や考察を述べただけで、実際の実験状況としてありえそうな熱ゆらぎ的なガウシアンホワイトノイズやポアッソン的な離散ランダムノイズに対してどの様に応答するかは脇に置いていました。これは記述が中途半端だと摂動の影響が弱いと誤解されやすい結果だったというのも理由のひとつでした。本論文では、ホワイトノイズに加えてスポラディックノイズとここで名付けた離散ランダムノイズ摂動に対する運動変化を検討しました。ちなみに自己駆動液滴の運動方向変化は双極子の軸と四極子の軸の角度差変位(その原因に摂動を置いている)の応答が収束タイプから追いかけっこタイプになって湾曲運動になるからです。計算結果は、小サイズ液滴に対応する収束タイプではいずれのノイズでも変位を減少させる方に働き、大サイズ液滴ではノイズを拡大する形で運動も湾曲度が増しました。次に、ノイズの性質について比較すると、摂動から戻る緩和時間よりもずっと速く次のノイズ入力があるガウシアンホワイトノイズの場合は実空間での運動軌道はノイズのみと印象があまり変わりません。一方で、スポラディックノイズの時は、台力への応答で十分湾曲したあと程度に次の外力が入るので、平均摂動間隔が緩和時間と同程度か長ければ得られる軌道は湾曲がより拡大されます。実験で得られる軌道のサイズ依存などから摂動の性質を逆に推定すると、航跡など液中濃度ムラや界面活性剤ミセル化の振動的変動などが主要因と推定しました。航跡など大きな濃度ムラは液滴の速度やサイズにも応じて入力確率が上がる点も湾曲が大きくなる要因になりえます。

 

"Near-wall rheotaxis of the ciliate Tetrahymena induced by the kinesthetic sensing of cilia"
Takuya Ohmura, Yukinori Nishigami, Atsushi Taniguchi, Shigenori Nonaka, Takuji Ishikawa, Masatoshi Ichikawa
Science Advances 7, abi5878/1-8 (2021)
DOI: 10.1126/sciadv.abi5878
泳ぐ微生物が海まで流されない理由@京都大学 環境展望台
壁は好きだが流れには逆らう。テトラヒメナが壁が好きで壁に集まる事に関する物理学/流体力学的なメカニズムを明らかにしたのが下のほうのPNAS論文ですが、その機能が走流性という流れに逆らう別の生物学的機能のメカニズムにもなっている事を実験とシミュレーションで明らかにしたのが本論文です。生き物らしい「うごき」や生物学的機能の代表例とされている走性(化学走性、光走性、etc.)のなかの1つである「走流性」が、繊毛という運動器官の力学的応答(広い意味でのメカノセンシング機構)と流体力学によって実現されている事が分かりました。神経や脳を持たない単細胞生物が自身の生存戦略の最適化の末に編み出した、原始的な知能にも見える応答機構です。さて、テトラヒメナが属する淡水生の遊泳微生物は池や川などに棲んでいます。いずれも流れが無いと澱んでよろしく無い水になるので、流れが有るのが普通の環境となっています。彼らが流されて行き着く先は最終的に海になるのですが、それは死を意味します。彼らは膨大な増殖力でもって流されても流されても上流から居なくならないのでしょうか。それとも上流に発生源が有るのでしょうか。あるいは下流から上流へと戻る能力が有るのでしょうか。最後に挙げた、流れの向きを検知して上流に泳いで行く、流れの中でその場に留まる能力や運動の事を走流性と呼びます。この疑問に対して、単細胞の繊毛虫(ゾウリムシ)に走流性があるというのは100年程前に報告されました。この報告を根拠に、以降「単細胞の遊泳微生物にも走流性が有るのでオッケー」とされていました。軽薄なノリで書いていますが、その後100年間追試も他の種に対する研究もメカニズムの研究も為されていないので、実際にその位の認識でオッケーとされていたと思われます。ここで、単細胞遊泳微生物は脳や神経系を持たないので「考えたり判断したり」はしません。では、流れ検知して上流を判断し、流れに逆らう事を決める機能はどの様に実装されているのでしょうか。それは単細胞生物に可能なものなのでしょうか。この点が本研究で大事な視点となります。ちょっと話が長くなったので続きは上のリンク等を参照してください・・・


"Accumulation of Tetrahymena pyriformis on Interfaces"
Kohei Okuyama, Yukinori Nishigami, Takuya Ohmura, Masatoshi Ichikawa
Micromachines 12(11), 1339/1-12 (2021)
DOI: 10.3390/mi12111339
テトラヒメナが彼らの繊毛の内在的性質によって自動的に壁スライディングして壁に居つく。このメカニズムを解明したのがPNAS2018です。居つくならばどんどん集まって界面の細胞密度が増えるだろうけど、ぶつかれば離陸するし密度依存性など定量的にはどの様な性質なのだろうかと調べたのがこの論文です。事実を正確に説明すれば、テトラヒメナが表面に多量に居つくという性質を持っていることは、原生生物研究者の間では公知のレベルで100年前から知られていました。生態や採取の仕方を解説している教科書に載っています。しかし公知すぎて誰もが当たり前と考えるせいか、測定値として多い少ないを出したり、バルクと比較して本当に多いのかを示した研究は有りませんでした。言及だけです。図で見て分かる引用文献が無いのは不便だと感じていたので自分でやってみました。せっかくなので定量測定を行い、フィッツの法則(拡散モデル)との比較を行って、壁好きの度合いをバルクや異種界面とも定量的に比較できる集積係数というものを提案しました。実験結果としては、仕込み細胞濃度が高くなると、当然、界面密度は高くなりますが、集積係数自体は低下していく結果が得られました。

 

"Swimming droplets in 1D geometries: an active Bretherton problem"
Charlotte de Blois, Vincent Bertin, Saori Suda, Masatoshi Ichikawa, Mathilde Reyssat, Olivier Dauchot
Soft Matter 17, 6646-6660 (2021)
DOI: 10.1039/D1SM00387A
下記の水滴を使った自己駆動液滴系は O. Dauchot のグループから教わったもので、こちらは S. Suda 氏が先方に長期滞在した時に実施した実験です。彼らはマイクロ流体デバイスによって同じ大きさの液滴を多数生成させて、そのまま広いアリーナに導入して動きを観察したり、そのまま流路内で動きを測定したりという実験を行っています。広いアリーナではなく狭い通路に導入して液滴を引き延ばしたら分裂したりするのではないか、というのがこの論文です。メインで実験をやった二人に言わせるとなかなか分裂しなかったそうですが、極めて狭い流路に導くと分裂する事に成功しました。変な日本語ですが、自己分裂の様相が強いのでそう書いてみました。液滴が細い流路に泳いで行くと、前後放校にどんどん引き延ばされます。引き延ばされた管状の水が Plateau–Rayleigh instability で小液滴に分裂する。そんなふうに考えていた時期が我々にもありました。この管状の液滴は自由空間に置かれている訳では無いので物質輸送が不自由です。潤滑層とも呼ばれる狭い隙間を油が頑張って移動しないと変形自体が起き得ません。この問題は Bretherton problem と呼ばれています。実際、一方向に自己推進している際には中々分裂しませんでした。しかし、前後で自己推進の向きが逆になると分裂を開始させる事ができました。自ら分裂していくような状況です。ということでタイトルの active Bretherton problem へと繋がります。実験的にはどの様にしてこの自発性を再現良く取り出せるような流路を作るかという点がポイントになっています。

 

"Straight-to-Curvilinear Motion Transition of a Swimming Droplet Caused by the Susceptibility to Fluctuations"
Saori Suda, Tomoharu Suda, Takuya Ohmura, Masatoshi Ichikawa,
Physical Review Letters 127, 088005/1-5 (2020).
DOI: 10.1103/PhysRevLett.127.088005
泳ぐ水滴はなぜ直進しないのか?@京都大学 Physics synopsis
自己駆動する液滴が直進運動からふらふらと彷徨う様なカーブ運動へと転移するメカニズムを解明しました。扱う液滴はマランゴニ効果を利用して自分で泳ぐ純水液滴で、半径にして数十から数百マイクロメートルの球形状です。その様な「自分で泳ぐ」液滴の運動変化の何が重要やねんと思われるかもしれませんが、アメーバ細胞や遊泳微生物などに見られる「自分で泳ぐ」モードが本質的に直進安定なのか直進不安定なのかは、その後の運動の多様化を見越すと極めて重要な性質です。もしかしたら原始生命が獲得した最初の運動も原形質流動や外界の化学勾配を利用した「自分で泳ぐ」ものかもしれません。そう考えると大事っぽい気がしてきませんでしょうか。さて、極単純に大事な結果だけ書くと、(今回使った純水等の物性の場合で)半径数十マイクロメートル程度以下のサイズは動きの面でも内部自由度でも直進安定解を持ちます。先行研究で動き出す転移については理論的に与えられていましたが、本論文によって動き出した後について直進安定解を持つ事が実験と数理モデルにより示されました。そして上記のサイズを越えると、液滴が安定解として持ち得る遊泳タイプはpullerタイプ(小さい液滴)からpusherタイプ(大きい液滴)へと転移します。実は内部変数は双方共に数式上安定解なのですが、表現型として出てくる運動状態は直進安定から直進安定とは言えない状態になる事が明らかになりました。このあたり無駄にややこしいですが敢えて説明すると、 pullerタイプでは双極子ベクトルと四極子ベクトルの方向が外部摂動でズレた際に双方が双方に近づいて収束する形の速度場になっていました。その時、すみやかに直進運動に戻ると共に摂動分を少し回復します。一方、pusherタイプでは双極子ベクトルの向きは線形安定性を持つものの四極子のみの速度場は不安定固定点的となり、双極子との相互作用で固定点に固定されている状態になります。外部摂動で双方の向きが僅かでもズレると四は双から逃げる様に向きを変え、双はそれを追いかけてどんどん向きを変える事が分かりました。一応は四と双の方向が一致する状態が安定なのでいずれ直進に戻るのですが、相空間上を追いかけっこする時間も長く、その間に液滴の進行方向は大きく変わります。外部摂動、つまり濃度ゆらぎや対流などの外的な入力に対して、影響を縮小する応答か、影響を増幅する応答か。液滴の動きを決める規則、とくに双・四極子の揺動への感受性 (susceptibility) が転移する事で、人間の目線定義での動きが大きく変化するという事が明らかになりました。
 余談ですが、係数を適当に変えて実験状況や現実的な物性の制限を無視すると方程式系はピッチホーク分岐の様な転移を示す条件もあるようです。これは定常回転解に相当する訳ですが、今回の実験系ではほぼ見出せなかったので今回のメカニズムでは無いだろうと考察しました。過渡的には回転っぽい動きを見せるのは、この様な速度場条件に近づいたりするからかもしれません。また、更にサイズが大きくなるともう一つ転移が有るのですが、球面調和展開の高次項とそれらの相互作用をバッサリ切った近似のもとでの妥当性は怪しかろうという事で言及していません。

 

"Force generation by a propagating wave of supramolecular nanofibers"
Ryou Kubota, Masahiro Makuta, Ryo Suzuki, Masatoshi Ichikawa, Motomu Tanaka, Itaru Hamachi,
Nature Communications 11, 3541/1-9 (2020).
DOI: 10.1038/s41467-020-17394-z
離合集散する分子の波が生み出す力を計測@京都大学
細胞内でアクチンフィラメントは束や放射状や網目状など様々な形状のネットワークを形成して力生成しています。その中で、アクチンフィラメントの重合伸長による力生成が細胞の仮足形成で重要な役割を担っています。著者の R. Kubota と I. Hamachi は、アクチンフィラメントの重合伸長のごとく伸長成長するナノファイバを創出する事に成功しました。本論文は「だったらそのナノファイバが形成するネットワークから力を取り出す事ができるんじゃないか」というものです。アクチンネットワークも形成と消滅の両方が大事であると言われていますが、このナノファイバも形成と消滅を制御する事で力を伝達する事に成功しました。系は重合基質と共に重合反応を促進する触媒と乖離(分解)させる反応系で構成されています。擬二次元実験系において、重合促進と分解のそれぞれを端から時間差で投入すると、ナノファイバが網目状になった領域の進行波を形成する事が出来ました。重合分解反応の線形成分のみから推測した反応拡散シミュレーションで進行波が再現する事と、上記の式の反応条件周辺で進行波の定常状態を確認すると T. Ohta らが示した定常進行波解の要件(Ref. 太田隆夫「非平衡の物理学」)を満たし得る事が分かりました。BZ反応などが見せる多様な反応拡散パターンが知られていますが、その様な系へと拡張できる可能性を示した点が重要です。

 

"Repulsive/attractive interaction among compact DNA molecules as judged through laser trapping: difference between linear- and branched-chain polyamines"
Yusuke Kashiwagi, Takashi Nishio, Masatoshi Ichikawa, Chwen-Yang Shew, Naoki Umezawa, Tsunehiko Higuchi, Koichiro Sadakane, Yuko Yoshikawa & Kenichi Yoshikawa,
Colloid and Polymer Science 297, 397–407 (2019).
DOI: 10.1007/s00396-018-4435-3
遺伝子が載っている物質としてのDNAは直鎖高分子です。負電荷の荷電高分子であるDNAは多価カチオンの添加によって凝縮転移をおこします。DNA抽出の歴史的経緯とcondensationという単語が凝縮と凝集の両方を含む事もあり、いまだに凝縮と凝集は混同される事が多いのですが、著者のK. Yoshikawaらは両者を分ける事によるDNA物性の理解を通じてそこに潜む多様な調整機構を明らかにしてきました。K. Yoshikawaは私の大学院時代の指導教員なのでたまにこの類の研究をお手伝いします。さて、DNAに多価カチオン添加という文脈で実際の凝縮凝集パスを私の視点で解説すると、DNA高濃度で多価カチオンの過剰添加ではハードクエンチによるマクロな凝集&セグメントレベルでは凝縮が起きます;DNA高濃度で多価カチオンを加える濃度・速度によってはゲルになります;DNAが低濃度の場合は徐々にカチオン濃度を増やすイメージのもとで、まずDNA一分子の凝縮転移が起きますがこの時の表面電荷はまだアニオンが強くコロイド粒子の様に分散しています。更に増やすとDNAコロイド粒子間の凝集が起こり、濃度によっては沈殿状態へと移行します。点電荷カチオンによる実験では上記のふるまいを見せるのですが、無視できない大きさをもった多価カチオンを使うと少し離れたセグメント同士をくっつける効果が大きくなります。これは実験だけでなくモンテカルロシミュレーションでも示されています。本論文では分岐カチオンなどを使った時に、DNA粒子間をくっつける力の有無を光ピンセットによる直接接触によって測定しています。多価カチオンが直列か分岐かという小分子の僅かな形状の違いによって、凝縮状態における物性、ここではセグメントの凝縮密度や表面電荷状態などが反映されたもの、が異なる事を実証しました。生物が多価カチオンの僅かな違いでも凝縮状態を制御している可能性を示した研究です。

 

"Self-propelled motion switching in nematic liquid crystal droplets in aqueous surfactant solutions"
M. Suga, S. Suda, M. Ichikawa, Y. Kimura,
Phys. Rev. E 97, 062703/1-8 (2018).
DOI: 10.1103/PhysRevE.97.062703
自分自身で駆動力を生み出して運動する物体を自己駆動物体と呼びます。液滴の場合は自己駆動液滴です。自己駆動液滴の研究は長い歴史があるのですが、非常に乱暴に種別分けすると「基板上・液面上」「液中」の状況2種類と、それに付随する動き方で「表面張力で引っ張られる・流れに乗る」「マランゴニ対流で泳ぐ」「その他」で特徴づける事ができます。ちなみに、下の方のPRE012403では「液面上」で張力と対流のバランスの大小で運動方向を制御していました。上記の分別で「基板上・液面上」の研究は本当に長い歴史と多くの研究が有るのですが、「液中」は相分離や気泡など限られた状況でした。近年、水と油と界面活性剤で作る自己駆動液滴系が提案され、「液中」で「泳ぐ」液滴の創出と研究が飛躍的に進みました。つぎの段階として、多様な運動モードを生み出したり制御したりするにはどうすれば良いか。内部液滴に液晶を使えば液滴内部に様々な非対称性を導入できて運動も対称性が破れるんじゃないか。それがこの論文です。あいにく同じ事を考える人は複数いて、全部が全部最初の報告とはなりませんでしたが、本論文ではトポロジカル欠陥の場所がズレる事により、そのズレと対応した螺旋周期運動を取り出す事が出来ました。トポロジカル欠陥を静止時の自由エネルギー最小の場所からずらす力は対流の強さで、抗力トルクは液晶物性と界面アンカリング力で調整できます。物性とアンカリング力が固定でも、サイズを変化させる事でも抗力トルクは制御できます。実際、この運動モードはサイズ依存的に螺旋ピッチ等が連続的に変化することや、液滴サイズが小さくなってネマチック相が消失した途端に直進運動に不連続転移する事が明らかになりました。また、サイズが大きくなると欠陥の場所が多自由度の運動になるのか、8の字運動など高次の運動を再現よく取り出す事もできました。

 

"Influence of cellular shape on sliding behavior of ciliates"
Yukinori Nishigami, Takuya Ohmura, Atsushi Taniguchi, Shigenori Nonaka, Junichi Manabe, Takuji Ishikawa, Masatoshi Ichikawa
Communicative & Integrative Biology, 11 (4), e1506666/1-5 (2018).
DOI: 10.1080/19420889.2018.1506666
下のPNASの論文ではテトラヒメナの壁スライディングですが、本論文では体長のアスペクト比をシミュレーション上で変化させた際のスライディングの可否を調べ、テトラヒメナとゾウリムシとの比較検討をしています。結論から言うと、テトラもゾウリムシも体長と繊毛長のバランスがスライディング可否相図境界付近の可能領域でした。スライディングはするが、ぶつかったり摂動が有ったら直ちに離陸する様な状態に対応します。生存戦略と結びついた淘汰の結果としての性質かもしれません。さて、微生物の細胞形状や繊毛長は容易に調整できませんが、シミュレーション設定上の形状や繊毛長は細かく調整可能です。回転楕円体のアスペクト比と実効繊毛長の2つについて変化させ、壁付近の運動を調べて相図を作成しました。相図は反発・スライディング・静止の3つを示すのですが、ゾウリムシやテトラヒメナ共に反発・スライディング線付近のスライディング条件に位置していました。余談になりますが、ゾウリムシ細胞の先頭付近に生えている繊毛は細胞内カルシウムシグナルと結びついた力学受容体となっており、その部分の繊毛が壁にぶつかると全細胞の繊毛運動の一時停止と逆走が起こり、少し方向転換して障害物を回避する運動を行います。本論文の繊毛停止はこのゾウリムシ先頭の繊毛停止と異なるパスウェイで起こっている(独立である)事を確認しています。

 

"Simple mechanosense and response of cilia motion reveal the intrinsic habits of ciliates"
T. Ohmura, Y. Nishigami, A. Taniguchi, S. Nonaka, J. Manabe, T. Ishikawa, M. Ichikawa
Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 115 (13) 3231-3236 (2018).
DOI: 10.1073/pnas.1718294115
繊毛虫テトラヒメナの壁面付近への集積メカニズムを解明@京都大学 
テトラヒメナやゾウリムシなどに代表される繊毛虫は池や湖などの広い空間を遊泳している印象が強いですが、実は野外では池の底や石、葉っぱの表面などの固体と液体の境界である壁面付近に多く分布していることが経験的に知られています。この壁面付近は、餌となる有機物が堆積し、周りの流れも弱くなるため環境の変化が少ない、繊毛虫にとっては生きやすい環境であると言えます。しかしながら、遊泳しているはずの繊毛虫テトラヒメナがどのようにして壁面を検知してその付近に集まるのか、といったメカニズムは解明されていませんでした。我々は、繊毛虫テトラヒメナが壁面付近を泳ぐ際の動きを実験で観測し、計測結果を流体シミュレーションで検証しました。その結果、繊毛虫が壁面にとどまり続ける性質が「推進力を生み出す繊毛の機械的な刺激応答特性」と「繊毛虫の細胞形状」という単純な2つの要素だけで説明できることを明らかにしました。それにより、エサを食べる際の壁を這う運動と、エサ場を探して壁から壁へと水中を高速で泳ぐ2つの運動とが、テトラヒメナ自身も特に意識すること無く自動的にスイッチする形で両立されている事が分かりました。

 

"The neck deformation of Lacrymaria olor depending upon cell states"
R. Yanase, Y. Nishigami, M. Ichikawa, T. Yoshihisa and S. Sonobe
Journal of Protistology 51, e001/1-6 (2018).
Lacrymaria olor 日本語名ロクロクビムシの首の動きに関する研究です。繊毛虫の一種であるロクロクビムシは妖怪ろくろ首の微生物版とも思える形状と動きを示します。その長い首を伸ばしたり縮めたりしてエサを探していると言われています。今回、この首の動きをハイスピードカメラで観察し、首の運動状態が4状態存在する事を明らかにしました。

 

"Active Materials Integrated with Actomyosin"
H. Ito, M. Makuta, Y. Nishigami and M. Ichikawa
Special Topics: Recent Progress in Active Matter, J. Phys. Soc. Jpn. 86, 101001/1-6 (2017).
骨格筋から抽出したアクチンとミオシンを封入したマイクロ液滴の界面の変形運動を、内部に分散させたビーズの運動と相関付けて観察しました。界面が激しく揺動するとき、中のビーズも激しく動く事から、界面に形成されているコルテックス(殻)が運動するというよりは、内部のアクトミオシン束の協同的な動きによって界面が激しく揺動している事が確認されました。今後はビーズの動きを解析し、内部構造の蛍光画像などと比較する事で変形運動の全容や制御方法が分かってくると見込んでいます。

 

"Geometry-driven collective ordering of bacterial vortices"
K. Beppu, Z. Izri, J. Gohya, K. Eto, M. Ichikawa, Y. T. Maeda
Soft Matter 13, 5038-5043 (2017).
遊泳バクテリアの集団は彼らが泳ぐことによって溶液の中に乱流的な渦を形成しますが、彼らをこの渦程度の大きさの微小な部屋に閉じ込めると回転方向が安定な定常的な渦が発生する事が報告されています。この部屋を連結させると、連結の距離に応じて渦同士の安定な回転方向が強磁性的になったり反強磁性的になる事を明らかにしました。バクテリアたちの渦形成の背後にある集団運動の性質が、幾何学形状を通じて渦の回転方向という特徴的でマクロな性質にあらわれるという興味深い結果です。超電導など凝縮系の物理で見られる渦同士の相互作用と似た点もあるため、背後にあるメカニズムの対称性なども気になる所です。

 

"Fabrication of Gold Microwires by Drying Gold Nanorods Suspensions"
T. Kurimura, Y. Takenaka, S. Kidoaki and M. Ichikawa
Adv. Mater. Interfaces 1601125 (2017).
机にこぼしたコーヒー液滴を放置しておくと輪ジミが出来ます。この輪ジミが出来る原理を応用する事で、金ナノロッドの分散溶液から金ナノロッドが集合した細線を自己組織的に作り出す事に成功しました。コロイド粒子の分散溶液が乾燥する時には、一般的に輪ジミが生成されます。この様な不均一な乾燥パターンは、インクジェット印刷や塗布工程などの工業プロセスでは大きな問題となるため、その解決方法が盛んに研究されています。本研究はその乾燥プロセスを制御する事で、一般的な輪ジミから垂直方向に延びる金ナノロッドの集合細線を作る事に成功しました。更に、細線の始点を制御する事や地点間を結ぶ方法を示したほか、実際に電流が流れる事も確認しました。

 

"Nanoscale hydration dynamics of DNA-lipid blend dry films: DNA-size dependency"
S. F. Shimobayashi, M. Hishida, T. Kurimura and M. Ichikawa
Phys. Chem. Chem. Phys. 18, 31664-31669 (2016).
DNA分子をその間に挟んだ脂質二分子膜のラメラを水和させた際の膨潤カイネティクスを高輝度小角X線散乱実験によって明らかにしました。これまでの研究でDNAなどの生体高分子を封入したリポソームを効率的に作成する実験手法を開発していましたが、そこでのリポソーム生成の初期過程を明らかした研究となっています。膨潤の初期過程ではDNAや膜が激しく、そして密になって運動しており、光学顕微鏡ではその動態の判別が付きませんでした。高エネルギー加速器研究所の高輝度X線を用いる事により、ミリ秒からの初期過程を明らかにすることが出来ました。DNA分子が持続長程度で短いときは単純な緩和を示しましたが、DNA分子が非常に長い場合は振動緩和の様な挙動を見せました。からまり合うDNAが示す粘弾性と水和のダイナミクスが相まってこの様な挙動になったと思われます。この研究によりリポソーム形成に重要な初期過程のプロセスが明らかになり、DNAなどの生体分子を高効率にリポソームに封入する際の設計に物理的な指針を与える事が出来ました。

 

"Noise-supported actuator: Coherent resonance in the oscillations of a micrometersized object under a direct current-voltage"
Tomo Kurimura and Masatoshi Ichikawa
Applied Physics Letters 108, 144101/1-4 (2016).
ノイズやゆらぎを利用して効果的に駆動するアクチュエータの動作原理を実験で確認しました。これまでの研究で、対向針電極間に直流の電圧を掛けた時に、その間に浮かぶ物体が往復運動をしめす事を報告しています。このとき、電圧ノイズによって往復運動領域が拡がり、より低電圧からの駆動が起きる事を発見しました。本論文では、ホワイトノイズの印加によって往復運動が誘起される事や、その効率が最大となるホワイトノイズ強度が有る事(共鳴的)、誘起された運動の周波数がホワイトノイズ帯域の端に依るもので無い事などを実験で確認しました。これらの結果を基に、coherent resonance (確率共鳴 stochastic resonanceの仲間)と呼ばれる、リミットサイクル振動子とノイズとの共鳴現象であると結論付けました。この原理を応用すれば、生体分子モータの様に熱ゆらぎが相対的に大きくなるナノメートルの世界でも規則的な運動を効率的に取り出せる機構の設計ができます。

 

"Direct observations of transition dynamics from macro- to micro-phase separation in asymmetric lipid bilayers induced by externally added glycolipids"
Shunsuke F. Shimobayashi, Masatoshi Ichikawa and Takashi Taniguchi
Europhysics Letters 113, 56005/1-6 (2016).
細胞膜の非対称性を真似た系を作ると、マクロ相分離がミクロ相分離に転移する事を実験とシミュレーションから明らかにしました。近年、脂質膜系での相分離現象が盛んに研究されています。しかし、細胞膜ではミクロ相分離状態などだと推定されている条件でも、モデル膜系ではマクロ相分離になる事が殆どで、その原因は不明でした。先行研究として、膜タンパク質の添加によるミクロ化が報告されています。この様な系で、細胞膜の非対称性に着目し、糖脂質ガングリオシドのGM1を相分離したベシクルに添加すると、水と油の様にマクロ相分離状態になっていたベシクル膜の相分離が、帯形状を経由して分散したミクロドメインに変化していく事を発見しました。通常の相分離カイネティクスを逆回しにした過程となっています。この逆回しのプロセスの動力学過程の研究はこれまでに無いものでした。ガングリオシドの添加が膜の自発曲率を上昇させるというモデルを基に、3次元に浮かぶ2次元液膜小胞のTDGLシミュレーションを行うと、実験の定性的傾向が再現される事が確認されました。本研究自体は形状と相分離が膜の自発曲率を介して強くカップルした系に特有の面白い現象に関する報告であり、直接的な意味での生化学的な役割は良く分かっていませんが、細胞膜の非対称性を真似るとラフトの様にミクロな相分離になったというその関連には興味が沸きます。

 

"Non-periodic oscillatory deformation of an actomyosin microdroplet encapsulated within a lipid interface"
Yukinori Nishigami, Hiroaki Ito, Seiji Sonobe, Masatoshi Ichikawa
Scientific Reports 6, 18964 (2016).
アクティブにゆらぎつつ形を変える人工細胞的なものを創りました。ミクロ液滴内にアメーバのアクチンとミオシン[PLoS ONE, 0070317/1-9 (2013)]を封入したもので、実験系は下の[Phys. Rev. E 92, 062711 (2015)]と同じものです。液滴内部表面に再構成させたcortexが収縮を始める前、液滴内部に自律的に形成されたアクトミオシンの構造によって界面が応力を受け、それが液滴表面の激しいゆらぎになっている事を発見しました。この界面ゆらぎは熱揺らぎよりも遥かに大きいもので、分子モーターの力生成と自己組織化が生み出した、非平衡の界面ゆらぎです。本論文ではこの界面ゆらぎのパワースペクトルやサイズ依存性等を調べ、その性質を明らかにしました。大まかには、大きい振幅のへこみ変形がアンサンブル平均としてランダムな場所、時間で発生し、その時間相関が10sのオーダーでした。また、興味深い事に内部の構造体の対称性が大きく破れると、それに応じて界面ゆらぎの頻度や振幅も局在化し、特異な変形を見せました。この界面ゆらぎと変形を更に推し進める事で、細胞運動を再現するモデルを作る事が出来ると期待できます。

 

"Wrinkling of a spherical lipid interface induced by actomyosin cortex"
Hiroaki Ito, Yukinori Nishigami, Seiji Sonobe, Masatoshi Ichikawa
Phys. Rev. E 92, 062711 (2015).
ミクロ液滴表面に再構成した actomyosin cortex が自己収縮するに伴い、液滴界面が座屈変形する現象を発見しました。筋肉を収縮させる分子モータであるアクチン(actin)とミオシン(myosin)は、単一細胞レベルでも多くの動的現象で重要な役割を担うタンパク質でです。アクトミオシン(actomyosin)とも呼ばれるその2種のタンパク質の組み合わせは、細胞分裂や細胞運動、胚発生など、細胞の変形や運動の中で能動的な力生成を行っているとされています。その様な細胞運動の中でも特にブレッビング運動は、細胞表面直下のアクトミオシンのネットワーク構造、actomyosin cortex の収縮によって駆動されています。Actomyosin cortex どの様に収縮するのか、それらがどの様な境界条件の時にブレッビング運動が生まれるのか、その様な物性的、物理化学的な性質を調べるとき、少数の要素のみからモデルを再構成する実験系が力を発揮します。実際、再構成モデルを用いた研究は、アクトミオシンから発生する能動的な収縮力が、細胞運動と似た運動を生み出せる事を示してきています。この様な研究の流れの中で本研究は、脂質一分子膜を備えた油中水滴の中に actomyosin を封入し、その膜の内側に cortex を再構成させました。時間の経過と共に actomyosin は ATP を消費していきます。すると、ミオシン周りのATPが次第に枯渇し、ミオシンがアクチンフィラメントと結合してる時間が伸びていきます。そのとき、ミオシンは実質的な cross linker となり、cortex内部に応力を溜め込んでいきます。この応力によってcortexは面方向に収縮します。本系でもそれが「しわ (wringkling)」の発生原因になっていると考えました。cortexの収縮力、界面張力や曲げ剛性を入れたモデルによってwringklingの要件を計算し、実験結果にフィットしました。その結果、モデルは実験で出てきたサイズ・曲率依存性のスケーリングを良く説明し、フィッティングパラメータとして出てきたcortexの実効厚さ約200nmは、実験の蛍光像や過去のcortexの報告と良い一致を示しました。液滴の曲率という細胞サイズの微小空間に、変形形状が依存するという興味深い結果が得られました。

 

"Dynamic clustering of driven colloidal particles on a circular path"
Shogo Okubo, Syuhei Shibata, Yuriko Sassa Kawamura, Masatoshi Ichikawa, and Yasuyuki Kimura
Phys. Rev. E 92, 032303/1-11 (2015).
ホログラフィック光ピンセットで作製した円軌道運動トラップに多数のビーズをトラップした時に顕れる集団運動を研究しました。マイクロメータースケールの水中での運動なので、例えば1粒子なら慣性項を無視して速度に比例した粘性抵抗だけ考える非常に単純な運動方程式だけで十分記述する事が出来ます。しかし、粒子数が増えるとそれぞれがそれぞれの位置と速度で影響を与えあう為に、多体相互作用が効いてくる非線形な運動系になってしまいます。粒子数が3つの時の円運動軌道上では、粒子がリミットサイクルを示す事が知られていました。本研究では、3粒子以上かつサイズ不揃いの系についての実験と、粒子間の流体相互作用をオセーンテンソルで近似した運動モデル、を比較検討しました。粒子の大きさに関する並びの組み合わせや、相空間での比較を通じて、定性的な運動に関しては円軌道モデルで説明できる事。定量的な点に関しても、円軌道に垂直な成分(ラジアル方向)の運動自由度を取り入れたモデルでほぼ説明できる事を明らかにしました。見た目でブラウン運動よりも遅い感じのゆっくりした運動でも流体力学が記述するところの相互作用が働くのは教科書的には当たり前ですが、人間の運動感覚からは外れるので毎回不思議な感覚を覚えます。

 

"Droplet-Shooting and Size-Filtration (DSSF) Method for Synthesis of Cell-Sized Liposomes with Controlled Lipid Compositions"
Masamune Morita, Hiroaki Onoe, Miho Yanagisawa, Hiroaki Ito, Masatoshi Ichikawa, Kei Fujiwara, Hirohide Saito and Masahiro Takinoue
ChemBioChem 16, 2029-2035 (2015).
油中液滴が別の油水界面を透過する事でリポソームなる現象を、デバイスとして簡易に利用できるようにした、という研究です。デバイスとしては無駄な容量が極めて少ない点やリポソームの大きさが揃っている点に特徴があります。また、PDMS製のマイクロ流体デバイスを用いた同じ原理のリポソーム作成流路との比較で言うと、もはるかに安価で迅速なシステムで、少量作成から無駄が少ないというのが利点となっています。論文ではかなり広範な溶液組成のものをリポソームの内部に封入できますというデモンストレーションや、二分子膜性の検証、[Soft Matter 9, 9539 (2013)]で提案した理論との比較を行っています。デバイスは瀧ノ上研究室に詳細な解説があります。

 

"Oscillation and collective conveyance of water-in-oil droplets by microfluidic bolus flow"
Takuya Ohmura, Masatoshi Ichikawa, Ken-ichiro Kamei and Yusuke T. Maeda
Appl. Phys. Lett. 107, 074102/1-5 (2015).
直線状のマイクロ流路の中に大小の液滴を交互に連続的に流すと、小液滴が大液滴間を前後方向に振動運動するという研究です。大水滴間のある領域に小物体をトラップ出来るというもので、ミクロ領域での能動的輸送に利用できるかもしれません。類似の現象としては、血管を流れる赤血球の間にその様な領域が有る事が報告されています。本研究では、その様な大小水滴を作成するデバイスを設計し、大水滴間隔を制御した結果や振動の軌道などを格子ボルツマン法を用いたシミュレーションと比較しました。その結果、進行方向に垂直な2つの自由度と、大液滴が流体であることなどが、トラップや振動の発生を決定づける事が明らかになりました。

 

"Molecular behavior of DNA in a cell-sized compartment coated by lipids"
Tsutomu Hamada, Rie Fujimoto, Shunsuke F. Shimobayashi, Masatoshi Ichikawa and Masahiro Takagi
Phys. Rev. E 91, 062717/1-5 (2015).
DOI: 10.1103/PhysRevE.91.062717
脂質一分子膜で包まれた油中水滴とその内部に有るDNA分子の相互作用を調べた研究です。細胞は生物の基本単位であり、細胞内の生化学物質がどこに居てどの様に働くかは生命活動にとって非常に重要です。例えば、DNAやRNAなどの核酸分子がどこに居るかは、細胞の蛍光観察などを通じて多くの研究がなされていますが、その物理化学的なメカニズムに関しては殆ど研究されていません。今回、膜界面を持つマイクロメーターサイズの微小な油中水滴というシンプルな系で、DNAが溶液中と膜面のどちらにどの様な形態で存在するのかという実験を行いました。その結果、DNAの膜表面吸着現象に関して液滴サイズに対する依存性が得られました。このメカニズムを説明する仮説として、多価の陽イオンの膜面への吸着に関して、エントロピーの寄与の中に液滴のサイズ依存性が入る事に着目し、計算を行いました。膜に吸着した陽イオンが橋渡ししてDNAが膜に吸着するというストーリーです。計算の結果、液滴が小さくなると実験と同様の傾向が出るという結果が得られました。これを検証する為に、吸着割合の液滴のサイズ依存の結果をフィットすると、パラメータ1つで実験と良く一致する事が示せました。一種の微小空間効果として興味深い結果です。

 

"Quantification of the Influence of Endotoxins on the Mechanics of Adult and Neonatal Red Blood Cells"
Hiroaki Ito, Navina Kuss, Bastian E. Rapp, Masatoshi Ichikawa, Thomas Gutsmann, Klaus Brandenburg, Johannes M. B. Pöschl, and Motomu Tanaka
J. Phys. Chem. B, 119, 7837-7845 (2015).
DOI: 10.1021/acs.jpcb.5b01544
赤血球に対する敗血症因子とその治療薬が赤血球膜に与える影響を1細胞観察で定量評価した研究です。細菌感染症の中でも特に重篤な症状である敗血症は、その致死率の高さと有効な治療法の少なさが問題となっています。敗血症の症状は様々ですが、有名なところでは、エンドドキシンで呼ばれるグラム陰性菌膜に存在するリポ多糖(LPS)の毒性があります。LPSの毒性も多岐に渡りますが、今回はサルモネラ菌から抽出したLPS-Re, LPS-Ra, とその基部であるlipid-A が赤血球に引き起こすechnocytosisと呼ばれる大きな変形と、それらに対する敗血症治療薬ぺプチドP-19の拮抗効果を測定しました。測定はマイクロ流体デバイス内の拡散チャンバーに赤血球1つ1つを光ピンセットで並べ、1細胞毎の変形挙動を顕微鏡画像で観察。赤血球の形状をフーリエ変換し、そのスペクトルをモデルでフィットして膜の張力、曲げ弾性、ずり弾性の係数を得ました。Flicker spectroscopyというこの形状解析手法は、1細胞がシグナルに対してどの様に変化したかをそれぞれの細胞に関して追う事が出来るため、細胞毎に異なる応答を示す場合などには多数の細胞での平均よりも多くの情報を得る事が出来ます。実験結果を端的に列記すると、リポ多糖の催変形性は、リポ多糖が大きい方が強く、成人赤血球よりも新生児赤血球に対して特に有感である事。LPSがずり弾性係数を上げ、曲げ弾性係数を下げる傾向にあり、P-19がそれらにいくらか拮抗する事などが分かりました。曲げ弾性係数の低下はリポ多糖の挿入による膜のパッキング不整の増加に依っていると予想されます。ずり剛性の増加はレオロジー測定による過去の報告と相似であり、確たる事は言えませんが膜の裏打ち構造への作用が効いていると予想されます。

 

"Mode bifurcation of a bouncing dumbbell with chirality"
Yoshitsugu Kubo, Shio Inagaki, Masatoshi Ichikawa and Kenichi Yoshikawa,
Phys. Rev. E 91, 052905/1-9 (2015).
DOI:10.1103/PhysRevE.91.052905
タワシを机の上にのせて机を細かく振動させると、タワシは並進運動をはじめます。そのとき一方向に運動するのはタワシに非対称性が有る為です。本研究ではダンベル形状の金属物体を加振板の上にのせた時に、物体が見せる運動モードの転移を詳しく調べました。加振強度を大きくしていくにつれて、ダンベルはランダム運動からダンベルの軸方向に進む並進運動、並進運動からダンベルの軸を中心にして転がり往復する転がりモードへと転移していく事が明らかになりました。本論文では特に、前後非対称性が無いにも関わらず一方向運動する点に着目し、メカニズムの解明を行いました。転移挙動をダンベルの特徴を取り入れた計算機シミュレーションで再現して実験と比較すると共に、分岐付近での力学的な構造を考え、運動方程式を調べました。ダンベルの左右は最初ランダムに跳ね上げられてランダム運動します。ある加振強度に達すると、ダンベル左右のうち振幅の大きい方が周期解として記述される運動に入れるようになります。これだけだと周期運動から出る事も可能ですが、もう少し加振強度が強くなると小さい振幅の側の減衰が相対的に速くなり、片側だけが周期運動するモードに対する擾乱がどんどん小さくなります。このとき片側の周期運動には線形安定性が有るので、結果としてリミットサイクルの様になります。この解析で、運動モード転移に見られるヒステリシスや反発係数(素材)の違い、転移点の依存性などを良く説明できた事から、並進運動への転移に関しては十分な理解が得られました。自発的な対称性の破れとして面白い現象だと考えます。

 

"Dynamics of microdroplets over the surface of hot water"
Takahiro Umeki, Masahiko Ohata, Hiizu Nakanishi & Masatoshi Ichikawa,
Scientific Reports 5, 8046/1-6 (2015).
doi:10.1038/srep08046
Selected for 注目の論文(日本語)
 熱いコーヒーの表面に見える白い膜に気づいたことは有りますでしょうか。水面に張り付いているそれは、水蒸気の上昇気流でゆらぎますが、時に異様に速く割れ目が走ります。この現象は緑茶や紅茶にも見られ(抹茶やカプチーノの様な表面が泡で覆われたものでは見えません)、古くは寺田虎彦がその随筆で触れています。ちなみに単なる熱湯でも観察されます。さて、亀裂にも似た幅1 mm程の裂け目は、不思議なパターンを見せます。このパターンは溶液の対流パターンと対応しているに違いないと、アメリカの研究者が指摘していました。しかし、その実態や亀裂がどの様に生じるかは分かっていませんでした。我々はこの現象を、高速度ビデオカメラを取り付けた顕微鏡を用いて観察し、以下のような興味深い事実を明らかにしました。1) この白い膜は、大きさが10 μm程度で比較的大きさのそろった微小水滴からなる。2) 水滴は、水面から10~100μm直上に浮揚している。3) 膜の亀裂は水滴の集団的な消失で、速度が1~2 m/sの表面波の波面と共に伝播する。4)たった一つの水滴の消失による水面の攪乱をきっかけに引き起こされる。

 

"Emergence of DNA-Encapsulating Liposomes from a DNA-Lipid Blend Film"
Shunsuke F. Shimobayashi and Masatoshi Ichikawa,
J. Phys. Chem. B 118, 10688-10694 (2014).
 ゲノムサイズの長いDNAをその内部に封入した細胞サイズリポソームを効率的に作成する手法を新たに開発しました。細胞サイズのリポソームを作成する手法は複数ありますが、大きく2系統に分ける事が出来ます。1つは油中液滴を形成させる方法、もう1つは乾燥フィルムから形成させる方法です。両者とも長所短所有りますが、こと高濃度の生体高分子を封入する方法としては、前者の油中水滴による界面透過法が殆ど唯一の選択肢でした。今回、リポソーム形成メカニズムを詳細に検討する事で、後者のフィルムからの方法で界面透過法に迫る濃度での効率的形成に成功しました。端的には、静置水和法(simple hydration)の改良である湊元methodと、dehydration-rehydration法の良いとこどりです。更に、リポソーム形成時に顕れる現象を、絡まり合う高分子のダイナミクスや粘弾性相分離といったソフトマター物理の知見を生かして解析する事で、特に長いDNAの封入効率を劇的に高める事が出来ました。工学的には前者の界面透過法とその親戚が現状でベストであり、それに対する本手法の際立った優位点は大量生産に対するスケーラビリティです。一方、学術的な意義として、細胞内部のような高濃度の生体高分子溶液を封入したリポソームが自然な条件設定で自発的に出来うる事を示した本研究は、生命発生、特に細胞のはじまりを探求する研究として興味深い結果を出したと考えています。

 

"Communication: Mode bifurcation of droplet motion under stationary laser irradiation"
Fumi Takabatake, Kenichi Yoshikawa, and Masatoshi Ichikawa,
J. Chem. Phys. 141, 051103 (2014).
 レーザー光によって局所加熱されたcmサイズの液滴が、光強度に応じて自律的に運動モードを変化させる事を実験的に示しました。光が弱いときから順に、静止、ランダム、往復、回転、と運動モードを変化させます。この結果は、PRE 87, 013009 (2013)を実験によって検証したものに相当します。流動パターンと液滴の動きは先の論文における予想とほぼ同じであり、本研究によって十分に検証されたものと考えています。一方で、実験的な見地からは、また別の転移を含んでいる可能性を指摘しました。適当な時間遅れ、例えば慣性的な振る舞いによっても、同様の転移を見せる可能性があります。

 

"Microrheology of polysaccharide nanogel-integrated system"
Yurina Sekine, Kimiko Okazaki, Tomoko Ikeda-Fukazawa, Masatoshi Ichikawa, Kenichi Yoshikawa, Sadaatsu Mukai and Kazunari Akiyoshi,
Colloid and Polymer Science, 292(2), 325-331 (2014).
 ナノゲルによって形成された凝集構造の粘弾性をマイクロレオロジーによって測定した研究です。ナノゲルはドラッグデリバリーなど様々な応用が期待されていますが、造ったナノゲルの物性評価は粒径を測る他は難しいものでした。原料によってはマイクロメーター以上の大きさのゲルが出来ない種類もあり、素材からの推定も難しいものもあります。この研究では、マイクロレオロジー測定によってナノゲルの粘性と弾性を測りました。単粒子ではマイクロレオロジーでも難しいのですが、その凝集体を測る事で物性評価が可能である事を示しました。ナノゲルの特性評価は合成の指針として重要な情報となっています。そに新たなモノサシを導入した研究と言えます。

 

"Back-and-forth micromotion of aqueous droplets in a dc electric field"
Tomo Kurimura, Masatoshi Ichikawa, Masahiro Takinoue, Kenichi Yoshikawa,
Phys. Rev. E 88, 042918/1-5 (2013).
 ノイズで振動状態が安定化する50μmスケールの微小なリミットサイクル振動子を実現した研究です。対向針電極の間に油中水滴を置き、電極に直流電圧を掛けると、液滴球が電極によって帯電し、静電反発する事で対面の電極に飛ばされ、それを繰り返します。同様の往復振動はマクロな系や、金属球などでも起こります。本研究ではそれを微細化して、駆動電圧を大きく下げる事に成功しました。このとき、静電と誘電の両方の効果を考慮する事で、この水滴運動の系がリミットサイクルと呼べる系である事が明らかになりました。低次の対称性を考慮した水滴の運動方程式を立て、安定状態から振動状態への分岐を線形安定性解析すると、ホップ分岐の線が V~L^(3/2)という、非自明なスケーリング則を取る事が導けます(V電圧、L電極間距離)。このスケーリング則を実験と比較すると、過去の結果も含めて良好な対応があることが分かりました。さらに、電圧にホワイトノイズ(1Vpp)を印加すると、閾値電圧以下の条件にもかかわらず、非常に安定な振動が開始・維持されました。これは、確率共鳴の仲間として coherent resonance と呼ばれている現象に相当します。熱揺らぎの下で、スムーズな運動をすることのできるミクロモーターとして、今後の発展が期待できます。

 

"Dynamical formation of lipid bilayer vesicles from lipid-coated droplets across a planar monolayer at an oil/water interface"
Hiroaki Ito, Toru Yamanaka, Shou Kato, Tsutomu Hamada, Masahiro Takagi, Masatoshi Ichikawa, and Kenichi Yoshikawa,
Soft Matter, 9 (40), 9539-9547 (2013).
Front cover
highlighted on the Soft Matter blog
 油中水滴の界面透過のメカニズムを速度過程の面から明らかにした研究です。脂質2分子膜の小胞はリポソームとも呼ばれ、細胞膜の膜だけ再構成した入れ物として、人工細胞等の「うつわ」として利用されてきました。その様な研究は50年ほどの歴史が有りますが、実際のところ、細胞の中味の様な高濃度溶液でリポソームを作成する事は困難でした。その問題点を克服したリポソーム作成手法として、界面透過法という方法が最近盛んに使われるようになっています。脂質の1分子膜を伴った油中水滴を、別の油水界面を通過させる事で2分子膜小胞をつくるこの手法は、マイクロピペットやマイクロ流体デバイスなどを応用した様々な派生手法が有りますが、いずれも油水系で1分子膜+1分子膜プロセスという点は共通です。この論文はそのプロセスを速度過程の面から明らかにしました。まず、液滴の透過は自発的に起こりますが、だいたい途中で引っかかります。この速度過程を横倒しにした顕微鏡光学系で観察しました。次に、その透過ダイナミクスを理論解析(単純に言うと界面の発展方程式を球面で考えたもの)すると、実験の傾向と一致する事が示せました。大きな液滴は透過の最後の方で遅くなり、小さな液滴は最初のバリアが高いという結果です。更に、これを半静的な測定で検証したみたところ、よい一致が得られました。界面透過法の中で最も重要なプロセスのメカニズムが明らかになった事で、様々な派生手法の設計にも役に立つと期待できます。

 

"Structural Change of DNA Induced by Nucleoid Proteins: Growth Phase-Specific Fis and Stationary Phase-Specific Dps"
Yuko T. Sato, Shun Watanabe, Takahiro Kenmotsu, Masatoshi Ichikawa, Yuko Yoshikawa, Jun Teramoto, Tadayuki Imanaka, Akira Ishihama and Kenichi Yoshikawa,
Biophys. J., 105(4), 1037-1044 (2013).
 大腸菌のnucleoid proteinによって起こるDNAの凝縮転移をみた研究です。大腸菌はエサや環境に応じて増殖期と休眠期をとる事が知られています。このとき、ゲノムDNAと共に大腸菌のなかで凝縮状態(核様態)を作っているタンパク質が切り替わっている事が明らかになりました。真核生物で言えば、ヒストンタンパクが切り替わっている様なものです。この論文では、その切り替わっているタンパク質の中でそれぞれ発現量が多いFisとDpsというタンパク質を用い、DNAの凝縮転移を測定しました。仔細を省くと、Fis(増殖期)の場合は広い共存状態からゆるい凝縮状態へ、Dps(休眠期)の場合は多くの中間的状態を見せつつ凝縮するような振る舞いを示しました。Nucleoid proteins の精製は難しい為、DNAに作用させて物理化学的な機能を測定できたことは画期的です。ここからは予想ですが、 増殖期では頻繁な細胞分裂が起きる為、ゲノムの展開と凝縮を効率よく起こす必要が有ります。広い共存状態と何某かの外力はこの様なスイッチには適しています。一方、休眠期ではゲノムは活動を低下させますが、少しでも環境が戻れば節約しつつそれを使ってエサを求めて旅立ちたいところです。この様な連続的、あるいは特定の場所だけを少しずつ展開したいという用途には、多くの中間状態は便利であると思えます。

 

"Reconstruction of active regular motion in amoeba extract: Dynamic cooperation between sol and gel states"
Yukinori Nishigami, Masatoshi Ichikawa, Toshiya Kazama, Ryo Kobayashi, Teruo Shimmen, Kenichi Yoshikawa, and Seiji Sonobe,
PLoS ONE, 0070317/1-9 (2013).
 アメーバ細胞から取り出したアクトミオシン系を用いてブレブ運動をするモデル系を作った研究です。粘菌のアメーバ状態の方では無く、原生動物の Amoeba Proteus の方です。アメーバ細胞を初めとして様々な細胞には、ブレブ(bleb)という小さなたんこぶを作っては引っ込めるという動きを行う機能があります。 この動きをブレッビング(blebbing)と呼ぶのですが、この blebbing は一部の細胞においては細胞運動(移動)にも利用されているのではないかと言われています。アメーバはその典型例です。このbleb運動のメカニズムを研究する中で、破砕したアメーバ細胞の分画から取り出したアクチン繊維、ミオシンバンドル、ATP他細胞質を最小限の構成要素として、 bleb運動を自発的に行う再構成モデル系を創る事に成功しました。このモデル系の検討を通じて、actomyosin cortex (アクトミオシンの殻)で継続的に発生している収縮張力がblebの駆動力である事、アクトミオシンゲルのレオロジー(流動特性)が「止まるbleb」では無く「動いていくbleb」運動の源である事が確認されました。まだ分かっていない事だらけですが、特別なプロセス無しにアクトミオシンゲルの物性それ自体によってアメーバ運動+原形質流動に似た動きが可能である事を示した点が示唆的です。この物性の調整に関わる上下流のシグナルを研究する事で、実際のアメーバ運動の中での物性の役割が明らかになっていくものと期待できます。

 

"Controlling negative and positive photothermal migration of centimeter-sized droplets"
Masatoshi Ichikawa, Takafumi Iwaki, Fumi Takabatake, Keitaro Miura, Nobuyuki Magome, Kenichi Yoshikawa
Phys. Rev. E 88, 012403/1-8 (2013).
Image selected for PRE "Kaleidoscope"
 マランゴニ効果を利用して液滴を力学操作した研究です。水面上に浮かべた油滴を細いレーザー光によって局所加熱すると、マランゴニ効果によって液滴内外に対流が発生し、液滴が動き出します。この時、界面活性剤の濃度に応じて、加熱点であるレーザー光焦点に向かう引力的な動きと、逃げる斥力的な動きとに、運動モードが分かれることを発見しました。実験とシミュレーションを突き合わせる事で、水-空気間の界面張力と油滴表面の界面張力との温度依存性のバランスが引力・斥力を決める事が分かりました。簡単に言えば、液滴に発生するマランゴニ対流は引力的な運動を起こし、水-空気界面に発生するマランゴニ対流や3相接触線に係る界面張力は斥力的な運動に寄与します。これらは、競合のつり合い付近や、変形や加熱の強い非線形領域などに於いて、該当しない条件も探せますが、概ね広い領域で成り立ちます。また、マニピュレーションの効率の面で言えば、投入した光の運動量と比べて60倍以上の効率を出せる事が分かりました。これは、光ピンセットの様な光の反射や屈折で物体を動かしているのではなく、加熱と界面張力を介して運動エネルギーを得ているからです。光ピンセットと比べて、大きな物体を対象に6ケタ大きな運搬力を発生させる事が出来るこの方法は、ミクロからセンチの物体の非接触操作法として有望です。

 

"Plasmonic Imaging of Brownian Motion of Single DNA Molecules Spontaneously Binding to Ag Nanoparticles"
Ken Hirano, Tomomi Ishido, Yuko S. Yamamoto, Norio Murase, Masatoshi Ichikawa , Kenichi Yoshikawa, Yoshinobu Baba, and Tamitake Itoh,
Nano Lett., 13 (5), 1877-1882 (2013).
 銀ナノ粒子をDNA分子のプローブにした研究です。表面プラズモン共鳴を可視光から近赤外域で実現する物体として、銀のナノ粒子は最適な物体の一つです。量子ドットなどと同様に、暗視野観察や蛍光観察を通して、カラフルに光るナノ粒子を見る事ができます。今回、マンガンイオンが銀ナノ粒子とDNA分子を特に良く橋渡しし、DNAに銀ナノ粒子が適度に吸着する事を発見しました。条件を検討すると、DNAの状態を調整しつつ、1個対1本や、複数個の粒子を1本のDNAにくっ付ける事が出来ます。異なる色を発する複数の銀ナノ粒子を、1本の直鎖状のDNA分子に吸着させたとき、DNA分子の内部ゆらぎを可視化する事が出来ました。ゆらぎは高分子理論から導かれるものと良く一致しており、DNAを出来るだけ非修飾な状態で測定する手段として良い特性を持っています。この銀ナノ粒子は、通常の蛍光分子や量子ドットに比べて退色、活性酸素の発生や間欠発光等の点で利点をもっており、DNAをはじめとした分析プローブとしての応用が期待されます。

 

"Rotational motion of a droplet induced by interfacial tension"
Ken H. Nagai, Fumi Takabatake, Yutaka Sumino, Hiroyuki Kitahata, Masatoshi Ichikawa, and Natsuhiko Yoshinaga,
Phys. Rev. E 87, 013009 (2013).
 自発運動する2次元系の液滴に関して、その駆動力の大きさによって運動モードが転移する事を示した論文です。液滴の表面の1点に界面活性剤が存在し、そこから表面張力勾配が発生していると、マランゴニ対流によって液滴は自発運動を開始します。まずは平泳ぎの様な2つロールによって直進運動を開始しますが、駆動力が大きくなると界面活性剤の拡散と移流によって決まる表面張力分布に応じたマランゴニ対流の解に関して、回転を司る高次の項が値を持ってくることが分かりました。実験[F. Takabatake, JCP 134, 114704 (2011)]にあてはめて考察すると、液滴のサイズが中ぐらいの大きさ領域の時に回転を示す事になります。この振る舞いは実験結果を良く再現しています。化学マランゴニだけでなく熱マランゴニによる自発運動についても同様の現象が予言されます。

 

"Physicochemical analysis from real-time imaging of liposome tubulation reveals the characteristic of individual F-BAR domain proteins"
Tanaka-Takiguchi, Yohko; Itoh, Toshiki; Tsujita, Kazuya; Yamada, Shunsuke; Yanagisawa, Miho; Fujiwara, Kei; Yamamoto, Akihisa; Ichikawa, Masatoshi; Takiguchi, Kingo
Langmuir 29 (1), 328-336 (2013).
 下の論文が脂質膜とタンパク質のモデル実験系に応用されました。F-BARタンパク質という、膜に突起やチューブを生成させると言われているタンパク質を脂質膜小胞(リポソーム)に加えると多数のチューブを形成します。このF-BARを何種類かに関してリポソームに作用させると、多量にチューブが形成するグループと少量のチューブが良く伸びるグループに分かれました。下の手法を使って膜の堅さを定量化すると、F-BARによるチューブの補強も同様のグループに分かれます。このグループは分子系統樹と良く符合しており、興味深い結果です。これら物理化学的な性質と生化学的な機能との関連を見出す事が今後の課題です。

 

"Direct measurement of single soft lipid nanotubes: Nanoscale information extracted in a noninvasive manner,"
Akihisa Yamamoto and Masatoshi Ichikawa,
Phys. Rev. E. 86, 061905 (2012).
 中空の脂質ナノチューブのダイナミクスを測定する事で、その脂質チューブの太さや膜剛性率など、光学測定が困難な物理量をパッシブな手段で得られる事を示しました。アンサンブル測定では無く、1本1本を対象とした非破壊的な測定なので、個別のナノチューブをそれぞれ測る事ができます。解析手法としては、高分子物理と膜の物理のミックスとなっています。鮮明な全体像を取得する為に擬2次元セルを使うなど、少し凝った実験をしていますが像さえ撮れれば3次元でも実行可能です。細胞で起こる現象や非平衡過程などの、その1本を測りたい状況に力を発揮します。

 

"Phase separation in crowded micro-spheroids: DNA-PEG system,"
Nupur Biswas, Masatoshi Ichikawa, Alokmay Datta, Yuko Sato, Miho Yanagisawa and Kenichi Yoshikawa,
Chemical Physics Letters, 539-540(29), 157-162 (2012).
 ミクロサイズの液滴の中に高濃度のDNAとPEGを閉じ込め、その中で起こる相分離を観察しました。相分離の際にDNAリッチ相が液滴界面から成長していく点が面白い現象です。DNAリッチ相はしばらく待つと液晶相へと変化します。論文には相互作用に関して色々書いてありますが、実際には大きい曲率(接触角が稼げるジオメトリ)を持った界面から結晶成長しやすいという割と一般的な現象が根元に有る、という一言で済みます。 落着した液滴のふちからの成長が最も早い事もそれが理由の一つでしょう。


"Emergence of a thread-like pattern with charged phospholipids on an oil/water interface,"
Hiroaki Ito, Miho Yanagisawa, Masatoshi Ichikawa and Kenichi Yoshikawa,
Journal of Chemical Physics, 136, 204903 (2012).
The Journal of Chemical Physics, Editors' Choice for 2012
 エマルジョンにおける油水界面で観察されたミセルの特異な凝集パターンの研究です。油水界面に脂質の1分子膜を形成させる際、負荷電のPS系の脂質を用いると、拡散律速凝集(DLA)の様なパターンが表面に顕れました。DLAに見えますが、画像解析すると数μm程度の構造が出てくるパターンです。パターンの主体はPSのミセルであり、荷電の相互作用とDLAの両方を考慮する事で実験結果を検討しました。界面凝集に関して静電反発の効果がパターンに陽に顕れた例として興味深い結果です。

 

K. Hirano, M. Ichikawa, T. Ishido, M. Ishikawa, Y. Baba and K. Yoshikawa, "How Environmental Solution Conditions Determine the Compaction Velocity of Single DNA Molecules," Nucleic Acids Research, 40(1), 284-289, (2012) .
 DNAにスペルミジンやPEG+塩などの凝縮剤を混ぜると凝縮転移を起こすのですが、その転移過程(キネティクス)を1分子で計測した研究です。DNAをマイクロ流路の中で流動伸長する事で、凝縮剤投入からのDNA高次構造転移の速度過程を追う事が可能になります。この実験により、自由エネルギー差が大きくなると転移速度が上がる事が明らかになりました。相転移の界面進行や化学反応論に沿う結果ですが、細かく定量するには蛍光光度と撮像速度が技術的な壁となります。

 

M. Yanagisawa, N. Shimokawa, M. Ichikawa and K. Yoshikawa, "Micro-segregation induced by bulky-head lipids: Formation of characteristic patterns in a giant vesicle," Soft Matter, 8, 488 (2012).
 GPIアンカーなどの「頭でっかち」の膜成分が有った時に、相分離が物理化学としてどうなるか、という研究です。やや短めのPEG修飾をでかい頭として使っています。実験結果は、相分離のドメインが細かくなるというものでした。また、このドメインの細分化がある閾値を超えると急に顕れるのですが、ドメイン境界への影響を計算した理論によってその挙動が裏付けられました。ラフトなどのナノサイズのドメインが形成される物理化学的な機構との関連に興味が持たれます。


F. Takabatake, N. Magome, M. Ichikawa, and K. Yoshikawa, "Spontaneous mode-selection in the self-propelled motion of a solid/liquid composite driven by interfacial instability," The Journal of Chemical Physics 134, 114704 (2011).
 水面に浮かべた、油滴と石鹸の連結物体が見せる自発運動の研究です。石鹸から溶けだす界面活性剤が油水界面の界面張力を下げると、その張力勾配に応じてマランゴニ対流が発生します。その対流は液滴内外に平泳ぎの様に発生し、物体を推進します。この時、石鹸が大きくなるに従って運動モードが自転、直線、公転運動へと切り替わっていく事が発見されました。運動の対称性から現象論的なモデルを当てはめています。運動モード変化の具体的なメカニズムは今後の課題です。


T. Kishita, N. Kondo, K. Takahashi, M. Ichikawa, J. Fukuda and Y. Kimura, Interparticle force in nematic colloids: Comparison between experiment and theory, Physical Review E 84, 021704 (2011).
 ネマチック液晶中にコロイド粒子を分散させた系をネマチックコロイドと呼びます。液晶の弾性エネルギーに関して変分をとると、ラプラス方程式が出てきます。つまり、静電気学とアナロジーが成り立ちます。例えばコロイド粒子の存在やそれに付随する転傾欠陥などは、正負の荷電(±1/2, ±1, ...)に対応します。配向ベクトルの反転対称性が半電荷の存在を許します。さて、ネマチック液晶中のコロイド粒子はその周りに逆荷電の欠陥を生成するので、双極子(条件によっては四重極子)として振る舞う事が知られています。このとき、大きさが異なる双極子同士の相互作用 [T. Kishita, PRE 81, 010701] と共に、四重極子との相互作用も研究したのがこの論文です。四重極子欠陥対はこの場合、土星の様なものとなります。即ち、主星がコロイド粒子で、サターンリングと呼ばれる輪が転傾欠陥です。サターンリング欠陥は安定条件が狭く、全体の配向力と粒子表面のアンカリングの力を絶妙にバランスさせる必要があり、実験的に得る事は非常に難しいものでした。今回はこの結果も併せて検討しています。実験結果はシミュレーションとも高い精度で一致しています。


M. Negishi, M. Ichikawa, M. Nakajima, M. Kojima, T. Fukuda and K. Yoshikawa, "Phase behavior of crowded like-charged mixed polyelectrolytes in a cell-sized sphere," Physical Review E 83, 061921 (2011).
 脂質二分子膜の小胞はリポソームと呼ばれ、人工細胞のモデルとして盛んに研究されています。しかし、実際の細胞の様な高濃度のタンパク質や荷電高分子を内包する事は現時点では非常に困難です。この論文は、小空間に高濃度の生体高分子を内包する目的で、界面が一分子脂質膜の液滴を使用しました。アルギン酸ナトリウムとT4DNAを高濃度で封入したところ、液滴のサイズが小さくなるに従って相分離が誘起されるほか、膜部分と体積部分への異方的集積を主体とした、特異な相挙動が発見されました。ちなみに通常の試験管や巨大液滴では相分離が起きない条件を明らかにした上で実験を行っています。これは界面面積比の増大による界面誘起の相分離と言えます。詳細な機構として、フローリーハギンスタイプの相分離モデルの中に、同荷電同士の反発力に起因する静電枯渇力を含めた相互作用の項を追加する事で、実験の挙動を定性的に説明しました。モデルの中では微小空間効果として、体積面積の格子数比だけでなく、界面への相互作用の曲率依存が考慮されています。一分子では僅かな力しか働かない微小空間効果ですが、相挙動として協同的に効く事で、ナノでは無くマイクロメーターサイズで顕れてきた事に意義があります。

 

Naoki Yamamoto, Masatoshi Ichikawa, and Yasuyuki Kimura, "Local mechanical properties of a hyperswollen lyotropic lamellar phase," Physical Review E 82, 021506(1-8) (2010).
 二分子膜ラメラの中に入れたナノ粒子の動きには、ラメラの波うちダイナミクスが反映される、というマイクロレオロジーの研究です。中性界面活性剤C10E3が水中で形成するラメラ相は、その濃度を変える事で層間隔を制御する事が出来ます。層間隔十分に大きい時は、層間に存在するナノ粒子にとっては単なる擬二次元空間です。間隔が狭くなると膜の波うち構造の影響を受け、その時間領域の拡散係数に異常が出てきます。更に間隔が狭くなるとその波うちにトラップされるようになります。以上は、その時間領域の粘弾性として測定される事になります。一方、光ピンセットによってナノ粒子を牽引すると先の粘弾性をまずは受けるのですが、変位が大きくなると、粒子によって生じるラメラ構造の変形緩和が計測されることが分かりました。すなわち、変形を受けたラメラ構造が元の構造に緩和するまでは、構造の粘弾性を受けないという事です。マクロな粘弾性測定では顕れない、構造と対象に特異的な粘弾性挙動と言えるでしょう。生物の細胞の中にはラメラ的な構造など様々な構造が有りますが、その中での巨大分子の拡散は通常の拡散では無く、異常拡散であろうことは、簡単に想像がつきます。本研究のラメラ構造はその様な系を極限までシンプルにしたモデル系です。

 

Hitoshi Uemura, Masatoshi Ichikawa, Kimura Yasuyuki, "Crossover behavior in static and dynamic properties of a single DNA molecule from three to quasi-two dimensions," Physical Review E 81, 051801(1-7) (2010).
 空間的に拘束された高分子のダイナミクスの研究として、擬二次元空間に閉じ込めた長鎖DNA1分子のダイナミクスを測定した研究です。空間的な拘束は高分子性というものが特徴的に顕れる環境条件の一つです。通常の溶液中ではいわゆるランダムコイル形状をとっているDNA分子ですが、これをその大きさ以下のスリットに閉じ込めると、ブロブ理論で予想される様な形状、拡散、緩和が見られる事が明らかになりました。ここではスリット間隔がブロブの特徴的大きさに相当します。つまり、スリット間隔が狭くなると、DNAの広がりが大きくなり、拡散が遅くなり、緩和が遅くなる、という変化が起きる事になります。スリットサイズに対して上記の変化のスケーリングを測定すると、ブロブ理論から導かれるスケーリングと大きさと拡散について定量的にも一致する事が示されました。

 

Takahiro Kishita, Kenji Takahashi, Masatoshi Ichikawa, Jun-ichi Fukuda and Yasuyuki Kimura, "Arrangement dependence of interparticle force in nematic colloids," Physical Review E 81, 010701(R)(1-4) (2010).
 ネマチックコロイドの力学的相互作用を直接測定した研究です。ネマチック液晶の中にコロイド粒子を分散させたものをネマチックコロイドと呼びます。例えば、垂直配向処理したコロイド粒子1個に着目すると、液晶の配向場がもつ弾性エネルギー最小化の為に、コロイド粒子の傍に対となる欠陥が生じます。この粒子欠陥対は液晶配向場の中であたかも電気双極子の様に振る舞うのでダイポールとも呼ばれます。ちなみに、液晶の弾性力を特徴づける3つの弾性係数が同値だという近似の元では、静電場系とまったく同じ式となります。ただし、コロイド粒子には大きさが存在するので高次の多項式(四重極子、他)が後ろにくっついてきます。高次の項の内、同じ大きさ同士のコロイド粒子では対称性から消える項もあるので、高次の項を抜いたシンプルな双極子双極子相互作用の式で考えるのが一般的です。ここでは発想を逆転させ、異なる大きさのコロイド粒子を用いる事で、その差分から非対称項を直接測れるのではないか、と考えて実験を行いました。実際、光ピンセットを用いて精密に測定すると、期待通りに非対称項を決定することが出来ました。更に、液晶の配向場をオーダーパラメータにした Landau-de Gennes theory をベースとした連続体シミュレーションを行った結果、実験結果をほぼ完ぺきに説明できる事も分かりました。


 

論文リスト

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60. "Simple mechanosense and response of cilia motion reveal the intrinsic habits of ciliates"
T. Ohmura, Y. Nishigami, A. Taniguchi, S. Nonaka, J. Manabe, T. Ishikawa, M. Ichikawa
Proc. Natl. Acad. Sci. USA , (2018).

59. "The neck deformation of Lacrymaria olor depending upon cell states"
R. Yanase, Y. Nishigami, M. Ichikawa, T. Yoshihisa and S. Sonobe
Journal of Protistology 51, e001/1-6 (2018).

58. "Active Materials Integrated with Actomyosin"
H. Ito, M. Makuta, Y. Nishigami and M. Ichikawa
Special Topics: Recent Progress in Active Matter, J. Phys. Soc. Jpn. 86, 101001/1-6 (2017).

57. "Geometry-driven collective ordering of bacterial vortices"
K. Beppu, Z. Izri, J. Gohya, K. Eto, M. Ichikawa, Y. T. Maeda
Soft Matter 13, 5038-5043 (2017).

56. "Fabrication of Gold Microwires by Drying Gold Nanorods Suspensions"
T. Kurimura, Y. Takenaka, S. Kidoaki and M. Ichikawa
Adv. Mater. Interfaces 1601125 (2017).

55. "Nanoscale hydration dynamics of DNA-lipid blend dry films: DNA-size dependency"
S. F. Shimobayashi, M. Hishida, T. Kurimura and M. Ichikawa
Phys. Chem. Chem. Phys. 18, 31664-31669 (2016).

54. "Noise-supported actuator: Coherent resonance in the oscillations of a micrometersized object under a direct current-voltage"
Tomo Kurimura and Masatoshi Ichikawa
Applied Physics Letters 108, 144101/1-4 (2016).

53. "Direct observations of transition dynamics from macro- to micro-phase separation in asymmetric lipid bilayers induced by externally added glycolipids"
Shunsuke F. Shimobayashi, Masatoshi Ichikawa and Takashi Taniguchi
Europhysics Letters 113, 56005/1-6 (2016).

52. "Non-periodic oscillatory deformation of an actomyosin microdroplet encapsulated within a lipid interface"
Yukinori Nishigami, Hiroaki Ito, Seiji Sonobe, Masatoshi Ichikawa
Scientific Reports 6, 18964 (2016).

51. "Wrinkling of a spherical lipid interface induced by actomyosin cortex"
Hiroaki Ito, Yukinori Nishigami, Seiji Sonobe, Masatoshi Ichikawa
Phys. Rev. E 92, 062711 (2015).

50. "Dynamic clustering of driven colloidal particles on a circular path"
Shogo Okubo, Syuhei Shibata, Yuriko Sassa Kawamura, Masatoshi Ichikawa, and Yasuyuki Kimura
Phys. Rev. E 92, 032303/1-11 (2015).

49. "Droplet-Shooting and Size-Filtration (DSSF) Method for Synthesis of Cell-Sized Liposomes with Controlled Lipid Compositions"
Masamune Morita, Hiroaki Onoe, Miho Yanagisawa, Hiroaki Ito, Masatoshi Ichikawa, Kei Fujiwara, Hirohide Saito and Masahiro Takinoue
ChemBioChem 16, 2029-2035 (2015).

48. "Oscillation and collective conveyance of water-in-oil droplets by microfluidic bolus flow"
Takuya Ohmura, Masatoshi Ichikawa, Ken-ichiro Kamei and Yusuke T. Maeda
Appl. Phys. Lett. 107, 074102/1-5 (2015).

47. "Molecular behavior of DNA in a cell-sized compartment coated by lipids"
Tsutomu Hamada, Rie Fujimoto, Shunsuke F. Shimobayashi, Masatoshi Ichikawa and Masahiro Takagi
Phys. Rev. E 91, 062717/1-5 (2015).

46. "Quantification of the Influence of Endotoxins on the Mechanics of Adult and Neonatal Red Blood Cells"
Hiroaki Ito, Navina Kuss, Bastian E. Rapp, Masatoshi Ichikawa, Thomas Gutsmann, Klaus Brandenburg, Johannes M. B. Pöschl, and Motomu Tanaka
J. Phys. Chem. B, 119, 7837-7845 (2015).

45. "Mode bifurcation of a bouncing dumbbell with chirality"
Yoshitsugu Kubo, Shio Inagaki, Masatoshi Ichikawa and Kenichi Yoshikawa,
Phys. Rev. E 91, 052905/1-9 (2015).

44. "Dynamics of microdroplets over the surface of hot water"
Takahiro Umeki, Masahiko Ohata, Hiizu Nakanishi & Masatoshi Ichikawa,
Scientific Reports 5, 8046/1-6 (2015).

43. "Emergence of DNA-Encapsulating Liposomes from a DNA-Lipid Blend Film"
Shunsuke F. Shimobayashi and Masatoshi Ichikawa,
J. Phys. Chem. B 118, 10688-10694 (2014).

42. "Communication: Mode bifurcation of droplet motion under stationary laser irradiation"
Fumi Takabatake, Kenichi Yoshikawa, and Masatoshi Ichikawa,
J. Chem. Phys. 141, 051103 (2014).

41. "Microrheology of polysaccharide nanogel-integrated system"
Yurina Sekine, Kimiko Okazaki, Tomoko Ikeda-Fukazawa, Masatoshi Ichikawa, Kenichi Yoshikawa, Sadaatsu Mukai and Kazunari Akiyoshi,
Colloid and Polymer Science, 292(2), 325-331 (2014).

40. "Back-and-forth micromotion of aqueous droplets in a dc electric field"
Tomo Kurimura, Masatoshi Ichikawa, Masahiro Takinoue, Kenichi Yoshikawa,
Phys. Rev. E 88, 042918/1-5 (2013).

39. "Dynamical formation of lipid bilayer vesicles from lipid-coated droplets across a planar monolayer at an oil/water interface"
Hiroaki Ito, Toru Yamanaka, Shou Kato, Tsutomu Hamada, Masahiro Takagi, Masatoshi Ichikawa, and Kenichi Yoshikawa,
Soft Matter, 9 (40), 9539-9547 (2013).

38. "Structural Change of DNA Induced by Nucleoid Proteins: Growth Phase-Specific Fis and Stationary Phase-Specific Dps"
Yuko T. Sato, Shun Watanabe, Takahiro Kenmotsu, Masatoshi Ichikawa, Yuko Yoshikawa, Jun Teramoto, Tadayuki Imanaka, Akira Ishihama and Kenichi Yoshikawa,
Biophys. J., 105(4), 1037-1044 (2013).

37. "Reconstruction of active regular motion in amoeba extract: Dynamic cooperation between sol and gel states"
Yukinori Nishigami, Masatoshi Ichikawa, Toshiya Kazama, Ryo Kobayashi, Teruo Shimmen, Kenichi Yoshikawa, and Seiji Sonobe,
PLoS ONE, 0070317/1-9 (2013).

36. "Controlling negative and positive photothermal migration of centimeter-sized droplets"
Masatoshi Ichikawa, Takafumi Iwaki, Fumi Takabatake, Keitaro Miura, Nobuyuki Magome, Kenichi Yoshikawa
Phys. Rev. E 88, 012403/1-8 (2013).

35. "Plasmonic Imaging of Brownian Motion of Single DNA Molecules Spontaneously Binding to Ag Nanoparticles"
Ken Hirano, Tomomi Ishido, Yuko S. Yamamoto, Norio Murase, Masatoshi Ichikawa , Kenichi Yoshikawa, Yoshinobu Baba, and Tamitake Itoh,
Nano Lett., 13 (5), 1877-1882 (2013).

34. "Rotational motion of a droplet induced by interfacial tension"
Ken H. Nagai, Fumi Takabatake, Yutaka Sumino, Hiroyuki Kitahata, Masatoshi Ichikawa, and Natsuhiko Yoshinaga,
Phys. Rev. E 87, 013009 (2013).

33. "Physicochemical analysis from real-time imaging of liposome
tubulation reveals the characteristic of individual F-BAR domain
proteins" Tanaka-Takiguchi, Yohko; Itoh, Toshiki; Tsujita, Kazuya; Yamada, Shunsuke; Yanagisawa, Miho; Fujiwara, Kei; Yamamoto, Akihisa; Ichikawa, Masatoshi; Takiguchi, Kingo, Langmuir 29 (1), 328-336 (2013).

32. "Direct measurement of single soft lipid nanotubes: Nanoscale information extracted in a noninvasive manner," Akihisa Yamamoto and Masatoshi Ichikawa, Phys. Rev. E. 86, 061905 (2012).

31. Nupur Biswas, Masatoshi Ichikawa, *Alokmay Datta, Yuko Sato, Miho Yanagisawa and *Kenichi Yoshikawa, Phase separation in crowded micro-spheroids: DNA-PEG system, Chemical Physics Letters, 539-540(29), 157-162 (2012).

30. "Emergence of a thread-like pattern with charged phospholipids on an oil/water interface"
Hiroaki Ito, Miho Yanagisawa, *Masatoshi Ichikawa and Kenichi Yoshikawa, Journal of Chemical Physics, 136, 204903 (2012).

29. How Environmental Solution Conditions Determine the Compaction Velocity of Single DNA Molecules,
*Ken Hirano, Masatoshi Ichikawa, Tomomi Ishido, Mitsuru Ishikawa, Yoshinobu Baba and Kenichi Yoshikawa,
Nucleic Acids Res., 40(1), 284-289, 2012.

28. Micro-segregation induced by bulky-head lipids: Formation of characteristic patterns in a giant vesicle,
Miho Yanagisawa*, Naofumi Shimokawa, Masatoshi Ichikawa and Kenichi Yoshikawa,
Soft Matter, 8, 488 (2012).

27. "Spontaneous mode-selection in the self-propelled motion of a solid/liquid composite driven by interfacial instability," Fumi Takabatake, Nobuyuki Magome, Masatoshi Ichikawa, and Kenichi Yoshikawa
The Journal of Chemical Physics 134, 114704 (2011).

26. "Interparticle force in nematic colloids: Comparison between experiment and theory," Takahiro Kishita, Noboru Kondo, Kenji Takahashi, Masatoshi Ichikawa, Jun-ichi Fukuda and Yasuyuki Kimura,
Physical Review E 84, 021704 (2011).

25. "Phase behavior of crowded like-charged mixed polyelectrolytes in a cell-sized sphere," Makiko Negishi, Masatoshi Ichikawa, Masahiro Nakajima, Masaru Kojima, Toshio Fukuda, and Kenichi Yoshikawa,
Physical Review E 83, 061921 (2011).

24. Naoki Yamamoto, Masatoshi Ichikawa, and Yasuyuki Kimura, "Local mechanical properties of a hyperswollen lyotropic lamellar phase," Physical Review E 82, 021506(1-8) (2010).

23. Hitoshi Uemura, Masatoshi Ichikawa, Kimura Yasuyuki, "Crossover behavior in static and dynamic properties of a single DNA molecule from three to quasi-two dimensions," Physical Review E 81, 051801(1-7) (2010).

22. Takahiro Kishita, Kenji Takahashi, Masatoshi Ichikawa, Jun-ichi Fukuda and Yasuyuki Kimura, "Arrangement dependence of interparticle force in nematic colloids," Physical Review E 81, 010701(R)(1-4) (2010).

21. "Construction of exotic microstructures from nanoscale molecular assembly" Masatoshi Ichikawa & Kenichi Yoshikawa, (Ed. by Katsuhiko Ariga and H. S. Nalwa), BOTTOM-UP NANOFABRICATION: Supramolecules, Self-Assemblies, and Organized Films, (American Scientific Publishers, Los Angeles, 2009). Volume 4, Chapter 7, page 167-188, ISBN: 1-58883-079-9 (2009.2)

20. Yoko Shitamichi, Masatoshi Ichikawa, Yasuyuki Kimura
Mechanical properties of a giant liposome studied using optical tweezers
Chemical Physics Letters, 479 (2009) 274-278

19. Masatoshi Ichikawa, Yoko Shitamichi and Yasuyuki Kimura, Extension and measurements on multicomponent phospholipid vesicles by use of dual-beam optical tweezers, Proc. IEEE 2009 Int. Symp. MHS, 170-175 (2009).

18. Kenji Takahashi, Masatoshi Ichikawa, Yasuyuki Kimura
Force between colloidal particles in a nematic liquid crystal studied by optical tweezers
Phys. Rev. E 77, 020703(R) (4pp) (2008).

17. Kosuke Kita, Masatoshi Ichikawa, Yasuyuki Kimura,
Self assembly of polymer droplets in a nematic liquid crystal at phase separation
Phys. Rev. E 77, 041702 (4pp) (2008).

16. Masatoshi Ichikawa, Yoko Shitamichi and Yasuyuki Kimura, Extension and measurements on a phospholipid vesicle by use of dual-beam optical tweezers, Proc. IEEE 2008 Int. Symp. MHS, 71-76 (2008).

15. Kenji Takahashi, Masatoshi Ichikawa and Yasuyuki Kimura, Direct measurement of force between colloidal particles in a nematic liquid crystal, J. Phys. Condens. Matter 20, 075106 (5pp) (2008).

14. Tilt control in optical tweezers, Masatoshi Ichikawa, Koji Kubo, Kenichi Yoshikawa and Yasuyuki Kimura, J. Biomed. Opt. Vol. 13, 010503 (3pp) (2008).

13. Masatoshi Ichikawa, Koji Kubo, Shizuaki Murata, Kenichi Yoshikawa and Yasuyuki Kimura, Single cell manipulation by using tilt controlled optical tweezers, Proc. IEEE 2007 Int. Symp. MHS, 316-321 (2007).

12. Masatoshi Ichikawa, Hiroki Ichikawa, Kenichi Yoshikawa and Yasuyuki Kimura, Extension of a DNA Molecule by Local Heating with a Laser, Phys. Rev. Lett. 99, 148104 (2007).

11. Kenji Takahashi, Yoshihiko Fujiwara, Masatoshi Ichikawa, Yasuyuki Kimura, Direct Measurement of Interaction Between Colloidal Particles in Nematic Liquid Crystal, Mol. Cryst. Liq. Cryst., Vol. 475, pp. 183-192 (2007).

10. Koji Tanaka, Masatoshi Ichikawa and Yasuyuki Kimura, Nonlinear dielectric spectroscopy of MHPOBC, Mol. Cryst. Liq. Cryst., Vol. 477, pp. 195/[689]-204/[698] (2007).

9. Kazuma Tsutsumi, Koji Tanaka, Masatoshi Ichikawa and Yasuyuki Kimura, Nonlinear dielectric study of critical behavior near Isotropic-Nematic phase transition, Mol. Cryst. Liq. Cryst., Vol. 477, pp. 77/[571]-85/[579] (2007).

8. Masatoshi Ichikawa, Yoko Shitamichi, Hirohisa Tashiro and Yasuyuki Kimura, Dynamic Study of Micro-domains on a Phospholipid Bilayer Membrane, Proc. IEEE 2006 Int. Symp. MHS, 365-370 (2006).

7. Masatoshi Ichikawa, Yukiko Matsuzawa, Kenichi Yoshikawa, Entrapping Polymer Chain in Light Well under Good Solvent Condition, J. Phys. Soc. Jpn., vol.74, No.7, p.1958-1961 (2005).

6. M. Ichikawa, N. Magome and K. Yoshikawa, Rhythmic growth and collapse of a micro water droplet, Europhysics Letters, vol. 66, 545-551 (2004).

5. Koji Kubo, Masatoshi Ichikawa, Kenich Yoshikawa, Yoshiyuki Koyama, Takuro Niidome, Tetsuji Yamaoka, Shin-Ichirou M. Nomura, Optically driven transport into a living cell, Applied Physics Letters, vol. 83, 2468-2470 (2003).

4. Masatoshi Ichikawa, Yukiko Matsuzawa, Yoshiyuki Koyama, and Kenichi Yoshikawa, Molecular Fabrication: Aligning DNA Molecules as Building Blocks, Langmuir, vol. 19, 5444-5447 (2003).

3. Y. Matsuzawa, K. Hirano, A. Mizuno, M. Ichikawa, and K. Yoshikawa, Geometric manipulation of DNA molecules with a laser, Applied Physics Letters, vol. 81, 3494-3496 (2002).

2. Nobuyuki Magome, Hiroyuki Kitahata, Masatoshi Ichikawa, Shin-ichiro M. Nomura, and Kenichi Yoshikawa, Rhythmic bursting in a cluster of microbeads driven by a continuous-wave laser beam, Physical Review E, vol. 65, 045202 (2002).

1. Masatoshi Ichikawa and Kenichi Yoshikawa, Optical transport of a single cell-sized liposome, Applied Physics Letters, vol. 79, 4598-4600 (2001).

 

レビュー・書籍・記事・その他

"コーヒーを飲みながら", 市川 正敏, 応用物理 第86巻 第11号, 993-995 (2017).

"コーヒーの湯気:水面に浮遊する微小水滴のダイナミクス", 中西秀,市川正敏, 日本物理学会誌 第71巻 第7号, 480-483 (2016).

"静電位によって駆動される微小水滴", 栗村朋、市川正敏、瀧ノ上正浩, 材料表面の親水・親油の評価と制御設計(テクノシステム)、第5章/第6節 (2016).

"ブレブ駆動型アメーバ運動機構", 西上幸範、伊藤弘明、市川正敏, 原生動物学雑誌 第 49 巻第 1, 2 号, 1-9 (2016).

"試験管内再構築系を用いたブレブ駆動型アメーバ運動機構の研究", 西上幸範、伊藤弘明、市川正敏、植物科学最前線 6, 82-91 (2015).

"人工細胞システムの創成と構造制御", 濱田勉、市川正敏, 生化学第86巻第2号,pp. 209-213 (2014).

原生生物フロンティア、洲崎 敏伸 編、分担執筆 (第2章 "原生生物をより深く理解するための物理" 担当) ISBN: 9784759815177 (2014/08/20, 化学同人).

“光の操作,物体の操作で何をする?”,市川正敏、吉川研一、化学 59巻 8月号, 76-77 (2004).

“光ピンセットによる細胞内導入”久保康児、市川正敏、吉川研一、Bioindustry 10月号, 12-18 (2003).

"Laser Tweezers Transport Cell-Sized Liposomes", PHOTONICS SPECTRA, Apr., 32-33 (2002).

"Lasers grasp cell-size water balloons", Technology Research News, Mar. 13, (2002).

“レーザーで作りだすμmスケールの非平衡開放系 Periodic Bursting of Dispersed Beads in mm-Sized Laser-Field”
市川正敏、馬籠信之、北畑裕之、野村慎一郎、吉川研一, 物性研究, 77, no.2, 334 (2001).


 

講義について

 講義情報とか。  上に戻る 

熱力学(前期・火1 主として1~2回生)
物理や化学や工学に進む前に身に付けておきたい熱力学です。たまに小テストなどもしますが、基本的に定期試験で査定します。現在、レポート等のお知らせは有りません。

やわらかな物理学(後期・木5 1~4回生)
リレー講義です。担当回では、生物や生命現象といったものを、高分子・膜・液晶といったソフトマター物理の知見や、リミットサイクルなどの非線形科学の知見を使って理解できることを解説しています。担当回の授業中にレポート課題を出します。

物性物理学2b(後期・水2 4回生)
リレー講義です。界面・濡れ・液滴などをキーワードに持つ内容です。界面の物理化学や界面運動の動力学の背後にある物理的な機構を解説しています。担当回の授業中にレポート課題を出します。

課題演習B8
 こちらを参照して下さい。

課題研究Q8
 こちらを参照して下さい。

非線形科学(~H24, 3~4回生)、実験物理学III(H24,29, M1~)

 

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