市川研究室 研究紹介

日本語/English

ソフトマター物理学

非線形・非平衡物理学



ソフトマター物理学

    組成非対称な脂質二重膜小胞におけるマクロ-ミクロ相分離の転移ダイナミクス

    アクトミオシンによりアクティブに変形する脂質一重膜

    荷電脂質膜の膜内相分離と形態変化の競合的ふるまい

    再構成アクトミオシンコルテックスに引き起こされる脂質界面のしわ構造形成

    遠心型マイクロ流体デバイスによる細胞サイズリポソームの構築

    細胞サイズ液滴におけるDNAの分子挙動

    相補的なDNAに依る脂質二重膜接着の直接測定

    成人/新生児赤血球の形状ゆらぎとメカニクスに対する内毒素の定量的効果

    界面通過法による脂質二分子膜小胞形成の動的過程

    荷電リン脂質膜界面における動的なひも状ミクロパターン形成

組成非対称な脂質二重膜小胞におけるマクロ-ミクロ相分離の転移ダイナミクス

一般に、均一状態にある二成分液体の温度を相分離温度以下に下げると最終的には完全相分離状態(マクロ相) へと緩和する。しかしながら、起源は何であれ長距離斥力が二相間に働く場合、ラメラ相やヘキサゴナル相といったメソ相が熱力学的安定になる事がある。均一相からマクロ相やメソ相への相分離ダイナミクスは低分子や高分子の二成分系を用いてこれまで盛んに研究がなされてきた。それらとは対照的に、マクロ相からメソ相への相分離ダイナミクスは適切な実験系やモデルが無くほとんど未開拓である (figure a)。 今回我々は、外部から添加された糖脂質 (GM1) に起因する組成非対称な脂質二重膜小胞を用いて、マクロ相からヘキサゴナル様のミクロ相への構造転移ダイナミクスを報告する。糖脂質を添加されたマクロ相は、ストライプ相を中間相として経由し、ミクロ相へと転移する (figure b)。その際、マクロ相の二相界面からある波長の揺らぎが成長し、ストライプ相へと転移し、そのストライプドメインの先端で「くびれが生じ、ちぎれる」という興味深い現象が繰り返され、サイズ単分散なミクロ相へと転移する (figure c)。更には、非対称な組成に起因する自発曲率を考慮した膜の弾性と相分離を記述する時間依存型ギンツブルグ-ランダウモデルを用いて、この転移現象を数値的にもおよそ再現する事に成功した (figure b)。以上よりこの転移現象は、組成が非対称である事に起因する、ゼロで無い自発曲率によって誘起される事が強く示唆された。本研究によってマクロ相からメソ相への新規な相分離ダイナミクスが明らかにされたが、この転移現象の普遍性など未解決問題は多数残されており、今後の発展を期待する。

figure

click to enlarge
Reference
"Direct observations of transition dynamics from macro- to micro-phase separation in asymmetric lipid bilayers induced by externally added glycolipids" Shunsuke F. Shimobayashi, Masatoshi Ichikawa and Takashi Taniguchi, Europhysics Letters, 113, 56005 (2016).

アクトミオシンによりアクティブに変形する脂質一重膜

接着性真核細胞は細胞骨格アクチンとそのモータタンパク質であるミオシンによりアクティブに変形する。この動きは細胞全体において多くの因子が時空間的に制御された結果なされており、その機構は非常に複雑であると考えられる。我々はこのような過程を単純化するために試験管内で自発的に変形する人工脂質膜系の作製を試みた。自由生活型アメーバから抽出したアクトミオシンとカチオン性の両親媒性物質を適切な濃度で用いると、脂質単分子膜を活発に変形させる系を作製することに成功した。この系の解析から、変形には二つの運動モードが存在することが分かった。一つはアスター状のアクトミオシン複合体によって駆動される非周期性の振動変形で、もう一つはアクトミオシンコルテックス様構造により駆動される人工細胞膜のしわが深くなっていく変形(詳細はIto, et al. PRE, 2015)であった。本研究はアクトミオシンを用いて脂質一重膜をアクティブに変形させた初めての系であり、生き物の複雑な動きの一部が比較的単純な組成で実現できたことは驚きである。この研究が発展すれば多くの細胞が行う細胞膜変形の原理を探求する事が可能となり、生き物が見せるアクティブな性質の理解が進むと期待できる。

figure

click to enlarge
Reference
"Non-periodic oscillatory deformation of an actomyosin microdroplet encapsulated within a lipid interface", Y. Nishigami, H. Ito, S. Sonobe and M. Ichikawa, Sci. Rep., 6, 18964 (2016).

荷電脂質膜の膜内相分離と形態変化の競合的ふるまい

本研究では、荷電性脂質が含まれる細胞サイズの脂質二重膜(リポソーム)を用いて、膜内相分離と膜の形態変化のカップリングを報告した。実験では、中性脂質と荷電性の飽和脂質(DPPG)によるリポソームは膜内相分離を示し球形を保つ一方で、中性脂質と荷電性の不飽和脂質(DOPG)によるリポソームは膜内相分離によって荷電性脂質が集合するとともに膜に穴が開き、カップ状やディスク状に変形した。溶液中に静電相互作用を遮蔽する塩を加えた系においてはこのような穴の形成は抑制されるため、この形態変化には集積した荷電性脂質間の静電相互作用が効いていることがわかる。そこで、静電反発が荷電性脂質分子の極性頭部の実効的な排除体積効果を生むことで穴の縁の線張力を下げると仮定し、各種の脂質分子の膜が持つ曲げ弾性エネルギーとの競合条件から実験で観察された穴の形成メカニズムを議論した。穴の縁への荷電性脂質の集積は、実験の空間分解能では観察できないものの、静電相互作用を取り入れた粗視化分子動力学シミュレーションによって確認され、この集積が穴の形成の原因であることが強く示唆された。本研究は北陸先端北陸先端技術大学院大学との共同研究である。

figure

click to enlarge
Reference
"Coupling between pore formation and phase separation in charged lipid membranes", H. Himeno, H. Ito, Y. Higuchi, T. Hamada, N. Shimokawa, and M. Takagi, Phys. Rev. E, 92, 062713 (2015).

再構成アクトミオシンコルテックスに引き起こされる脂質界面のしわ構造形成

真核細胞の細胞膜直下には、細胞骨格と呼ばれるアクチンタンパク質とミオシンタンパク質の複合体(アクトミオシン)によるコルテックス構造が存在する。細胞はこのアクトミオシンが生成する収縮力を様々な形に利用することで、細胞運動や細胞分裂といった生体機能を普遍的に発現している。そのような現象を物理的に理解するべく、抽出されたアクトミオシンと人工脂質膜を組み合わせた再構成系と呼ばれる実験系が用いられてきたが、実験系構築の難しさのために膜の変形はこれまでに実現されず理解が不十分であった。本研究では、抽出したアクトミオシンと脂質単分子膜の結合を工夫し、再構成系による界面の変形を初めて実現した。その界面形状の解析を行うことで、現れる形状に界面の曲率依存性が存在することを明らかにした。さらに、コルテックスの弾性や収縮性を取り入れた理論から、その曲率依存性を説明した。本研究の成果は、アクトミオシンと柔らかい界面における複合的な物理現象の解明に寄与するだけでなく、アクトミオシンによる界面変形を初めて人工系に実装したという点で人工細胞の創成に向けた大きな一歩を踏み出すものになると期待される。

figure

click to enlarge
Reference
"Wrinkling of a spherical lipid interface induced by actomyosin cortex", H. Ito, Y. Nishigami, S. Sonobe, and M. Ichikawa, Phys. Rev. E, 92, 062711 (2015).

遠心型マイクロ流体デバイスによる細胞サイズリポソームの構築

細胞サイズの脂質二分子膜小胞(リポソーム)は、細胞膜のモデル系として数多くの研究が行われている。この研究では、二分子膜の内外膜の脂質組成をコントロールした上で均一サイズのリポソームを簡便に作製するための、遠心型マイクロ流体デバイスを構築した。界面透過法を応用することで、ごく微小量(0.5-2μL)のサンプルから大量のリポソームが一度に得られ、それらが非対称な脂質組成のほか、内部でのタンパク質発現や二分子膜の流動性など、細胞膜モデルとして欠かせない性質を有していることを確認した。細胞膜モデルとして重要な種々の物性を制御できることから、リポソームを用いる広範な分野に応用できると期待される。本研究は東京工業大学・瀧ノ上研究室ほかとの共同研究で、我々は作製の動力学過程(H. Ito et al., 2013)に付随してあらわれるサイズフィルター効果の理論的な解明に貢献した。

figure

click to enlarge
Reference
"Droplet-Shooting and Size-Filtration (DSSF) Method for Synthesis of Cell-Sized Liposomes with Controlled Lipid Compositions", M. Morita, H. Onoe, M. Yanagisawa, H. Ito, M. Ichikawa, K. Fujiwara, H. Saito, and M. Takinoue, ChemBioChem, 16, 2029 (2015).

細胞サイズ液滴におけるDNAの分子挙動

細胞内空間を模倣するリン脂質に覆われた油中水滴内における長鎖DNAの分子挙動を調べました。我々は、ランダムコイル状態のDNAの膜への吸着現象並びに凝縮状態のDNAの膜面上での脱凝縮現象を見出し、これらが液滴サイズ依存的である事を明らかにしました。更には、DNAが異なる物性を持つ二相(液体秩序相と液体無秩序相)を有する膜界面と相互作用する際、構造状態に依存して異なる相に吸着される事を明らかにしました。これらの実験結果は、細胞サイズ空間におけるポリアミンとDNAの膜表面での協同的な相互作用を考慮した現象論的モデルによって説明されました。これらの知見は細胞内での分子事象並びに分子反応の物理的メカニズムの理解に貢献すると期待されます。なお、本研究は北陸先端技術大学院大学濱田勉博士らとの共同研究であり、本研究室は主に理論モデル構築に貢献しました。

figure

click to enlarge
Reference
"Molecular behavior of DNA in a cell-sized compartment coated by lipids", Tsutomu Hamada, Rie Fujimoto, Shunsuke F. Shimobayashi, Masatoshi Ichikawa and Masahiro Takagi, Physical Review E, 91(6), 062717 (2015).
top / page top

相補的なDNAに依る脂質二重膜接着の直接測定

脂質二重膜によって媒介される細胞-細胞間並びに細胞-基質間の多価相互作用は生物に遍在する。近年では、エマルジョンや脂質ベシクルの外面を選択的リンカーである短鎖DNAを用いて機能化する事によって、細胞接着を模倣する人工マテリアルを合成する事が可能となってきた。この技術の進展により、従来の固体ナノ粒子やコロイド粒子に適用されてきた選択的接着材としての短鎖DNAの応用性は拡張された。機能修飾された変形する脂質ベシクルは、多価相互作用の統計的効果と膜の変形が結合する事に起因して、複雑かつ柔軟な振る舞いを示す事が明らかになってきた [Parolini et al., Nature Communications, 2015, 6, 5948]。しかしながら、この系で観察された複雑な現象の定量的なキャラクタリゼーションと根本的理解は未だに欠如している。そこで我々は、ガラス基板に支持された平坦膜にDNAを介して接着された単一巨大リポソームの多価相互作用に着目する。幾何学的に観察し易くリポソームを配置する事によって、三次元構造の正確なキャラクタリゼーションが可能となり、膜の赤道面の揺らぎのスペクトルから表面張力測定に初めて成功し、それらの温度応答性を明らかにした。結果、接着したリポソームは溶液中を浮遊するリポソームと比べて著しく大きい表面張力を示し、浮遊するリポソームの表面張力は温度に対して負の相関を示すのに対し、接着リポソームの表面張力は温度非依存である事が明らかになった。これらの結果は膜の弾性エネルギーと流動する膜内を拡散するDNAの自由エネルギーを結合する理論モデルによって準定量的に説明された。なお、本研究はケンブリッジ大学Pietro Cicutaグループとの共同研究である。

figure

click to enlarge
Reference
"Direct measurement of DNA-mediated adhesion between lipid bilayers", Shunsuke F. Shimobayashi, B. M. Mognetti, L. Parolini, D. Orsi, P. Cicuta and L. Di Michele, Physical Chemistry Chemical Physics , 17(24),15615-15628 (2015).
top / page top

成人/新生児赤血球の形状ゆらぎとメカニクスに対する内毒素の定量的効果

敗血症はグラム陰性菌由来の内毒素により引き起こされる全身性炎症反応である。本研究では、敗血症因子である内毒素分子が赤血球の力学的物性に与える影響を定量した。赤血球の形状ゆらぎスペクトル解析(flicker spectroscopy)とマイクロ流体デバイスを組み合わせることで、個々の赤血球について内毒素添加前後の曲げ弾性、剪断弾性、表面張力を非侵襲的に測定することに成功した。その結果、内毒素は赤血球形状の円盤状-ウニ状転移を引き起こすだけでなく、曲げに対して柔らかく、剪断に対して硬く赤血球の弾性を変化させることがわかった。また、敗血症は新生児において特に重篤であることが知られているため、新生児赤血球と成人赤血球の定量的な比較を試み、新生児赤血球は剪断応答が成人赤血球に比べて約2倍顕著であることもわかった。さらに、マイクロ流体デバイスによる溶質制御を利用し、敗血症の新薬候補としてペプチド19(P19-2.5)の効果も調べたところ、これらの力学物性変化の抑制作用も確認された。本研究は、敗血症治療へ向けた知見のみならず、迅速で柔軟な物性定量に基づいた物理学的診断法を提案するものである。

figure

click to enlarge
Reference
"Quantification of the influence of endotoxins on the mechanics of adult and neonatal red blood cells", H. Ito, N. Kuss, B. E. Rapp, M. Ichikawa, T. Gutsmann, K. Brandenburg, J. M. B. Poeschl, and M. Tanaka, J. Phys. Chem. B, 119, 7837 (2015).
top / page top

界面透過法による脂質二分子膜小胞形成の動的過程

脂質単分子膜に覆われた油中水滴を別の油水界面に並ぶ脂質単分子膜に透過させることで脂質二分子膜小胞(リポソーム)を作製する手法は界面透過法や液滴法と呼ばれている。液滴法は、任意物質を任意濃度で内包したリポソームや内外非対称な脂質組成を持つリポソームを作製可能である等の利点から、汎用的なリポソーム作製法として広く採用され始めている。しかしその界面通過挙動は十分に理解されておらず、未だ個々の実験に合わせて最適条件を探っている段階にある。我々は、手法の効率化と現象の理解のために物理的な透過メカニズムの解明を試みた。液滴の界面透過ダイナミクスの観察から液滴の界面透過には3種の動力学的過程が存在することがわかった。さらに、透過挙動には液滴サイズ依存性が存在し、μmオーダーの細胞サイズが透過に適していることを見出した。我々はその透過挙動を反応拡散の枠組みから記述する数理モデルを構築し、液滴サイズ依存性を含む典型的な動力学的過程を再現した。さらに、モデルから予測される透過初期のサイズ依存性を準静的分布からも確認した。

figure
click to enlarge
参考文献
"Dynamical formation of lipid bilayer vesicles from lipid-coated droplets across a planar monolayer at an oil/water interface",
H. Ito, T. Yamanaka, S. Kato, T. Hamada, M. Takagi, M. Ichikawa, and K. Yoshikawa, Soft Matter, 9, 9539-9547 (2013).

top / page top
荷電リン脂質膜界面における動的なひも状ミクロパターン形成
 荷電リン脂質は生体膜の基本的な構成要素であるが、荷電に着目した物理化学的な研究は未だ発展段階にある。本研究では荷電脂質の静電相互作用がリン脂質の自己組織化現象に及ぼす効果に着目した。 油水界面に荷電リン脂質DOPSを含むリン脂質単分子膜を作成すると、膜界面にひも状のパターンが現れ、衝突・連結を経てネットワーク状に成長する現象が観察された。このネットワークは約10μmの均一な網目サイズ(特性長)をもち、本パターン形成がフラクタル構造を生む純動力学的なパターン形成ではないことが示された。さらにパターン成長は、バルク油相からの、荷電脂質から成る逆ミセルの吸着供給を伴う非平衡過程であることもわかった。荷電逆ミセルは、油中を3次元拡散して油水界面に吸着した後、膜界面上を2次元拡散しながら凝集する動的なパターン形成プロセスを辿る。ミセルの供給と静電相互作用を取り入れた数理モデルを構築して修正モンテカルロ・シミュレーションを行ったところ、実験とよく対応する動的パターン形成が再現された。ミセル間に働く短距離引力と長距離斥力の競合、及び動的なミセルの供給を伴うひも状パターン形成は、熱力学と動力学の協同の観点から説明することができる。
figure
click to enlarge
参考文献
"Emergence of a thread-like pattern with charged phospholipids on an oil/water interface", H. Ito, M. Yanagisawa, M. Ichikawa, and K. Yoshikawa, J. Chem. Phys., 136, 204903 (2012). Editor's Choice for 2012
top / page top






非線形・非平衡物理学

    マイクロ流体デバイス中を1列で流れるサイズの異なる水滴が見せる振動とクラスター形成

    直流電場が誘起するマイクロサイズ物体の往復運動とノイズの効果

    界面不安定性が引き起こす自発運動のモード選択
top / page top

マイクロ流体デバイス中を1列で流れるサイズの異なる水滴が見せる振動とクラスター形成
コロイド粒子や、荷電プラズマ、微生物の集団などのマイクロサイズの粒子は、個々に相互作用することで周期的な構造や秩序だった運動パターンを示すことがある。その一つに、マイクロ流体デバイス中を流れる1次元水滴結晶の波動伝搬現象がある[T. Beatus, T. Tlusty, R. Bar-Ziv, Nat. Phys. 2, 743-748 (2006)]。この研究では、マイクロサイズの流路を等間隔で1列に流れている油中水滴結晶(各水滴直径約10μm)が、各水滴周りの油の流体速度ポテンシャルによって相互作用し、水滴間隔の疎密波が伝搬する現象が報告されている。そこで我々は、流体相互作用する粒子が形成する秩序に着目し、実験を行った。マイクロ流体デバイス内に、サイズの異なる2種類の水滴(大水滴直径:140μm、小水滴直径:20μm)を交互に流すと、隣り合った2つの大水滴間を小水滴が進行方向に往復運動する新奇な現象を発見した。2つ大水滴間には閉じた油の流れが生じていることを格子ボルツマン法による流体数値計算によって確かめた。さらに埋め込み境界法を用いて、その閉じた流れの中に小水滴を配置して数値計算を行ったところ、小水滴は実験とほぼ同じ軌道を描いて往復運動した。また実験では、2つの大水滴の間に複数の小水滴が入り込むと、小水滴がクラスターを形成して回転・往復運動を示すことがわかった。
figure
click to enlarge
参考文献
"Oscillation and collective conveyance of water-in-oil droplets by microfluidic bolus flow", T. Ohmura, M. Ichikawa, K. Kamei, and Y.T. Maeda, Applied Physics Letters, 107, 074102 (2015).
top / page top

直流電場が誘起するマイクロサイズ物体の往復運動とノイズ の効果
対面電極針の間に位置するミクロ水滴の運動の実験である。電極は直流電圧が掛けられており、電極接触時の荷電反転により、反対側の電極へと飛ばされるとい う往復運動がみられる。我々はこれまで、この往復運動の発見 [PRE 74, 046301 (2006)] から、2次元的に電極を配置した際の回転運動 [APL 96, 104105 (2010)] を報告してきたが、今回、系をより微小にして電圧を下げた実験系を作る事に成功した。さらに静電と誘電の両方の効果を考慮する事で、この水滴運動の系がリ ミットサイクルと呼べる系である事を見いだした。また安定状態から振動状態への分岐は V〜L^(3/2)という、非自明なスケーリング則を取る事がわかった(V電圧、L電極間距離)。このスケーリング則を実験と比較すると、過去の結果も含 めて一致した。さらに、この系にホワイトノイズを入れた実験結果が図右下の時空間プロットである。閾値電圧以下の条件にもかかわらず、電圧にホワイトノイ ズ(1Vpp)を印加すると、非常に安定な振動が開始・維持されることがわかった。
figure
click to enlarge
参考文献
“Micro back-and-forth motion under DC electronic Field“, T. Kurimura, M. Takinoue, K. Yoshikawa and M. Ichikawa, Physical Review E, 88, 042918/1-5 (2013).
top / page top

界面不安定性が引き起こす自発運動のモード選択
界面における化学物質濃度や温度が非平衡状態になると、空間的な界面張力勾配が生じて界面が不安定化する。この現象はマランゴニ効果と呼ばれ、この時、界 面張力差が原因となって物体の自己推進運動が生じることがある。本研究では、オレイン酸の油滴とそのナトリウム塩であるオレイン酸ナトリウム(界面活性 剤)粒子から成る複合体の自己推進運動を調べた。複合体を水上に浮かべると、固体粒子から界面活性剤分子が溶け出すことで複合体近傍に界面活性剤濃度勾配 が生じ、化学マランゴニ効果による運動が引き起こされた。さらに、固体サイズが大きくなるに従って、自転・並進・公転運動の順に支配的な運動モードが変化 することが見出された。
figure
click to enlarge
参考文献
"Spontaneous mode-selection in the self-propelled motion of a solid/liquid composite driven by interfacial instability", F. Takabatake, N. Magome, M. Ichikawa, and K. Yoshikawa, J. Chem. Phys., 134, 114704 (2011).
top / page top