外的な強制を受けた反応拡散系に関する実験的考察

京都大学理学部 3回生
馬場一晴
E-mail:bamba@vega.ess.sci.osaka-u.ac.jp (現在のアドレス)

主旨

散逸構造、より広くは非線型、非平衡の物理の研究の発展を通して反応拡散系に関する関心が高まってきた。とりわけ、非平衡開放形の典型である生物現象や化学反応についての研究が進展するにつれ、反応拡散系の数理モデルが産み出されてきた。

そこで巨視的な世界における空間的時間的パターンがいったいどのような機構を通じて産み出され、そして発展していくのかを、「拡散」という空間における挙動と反応項で表現される相互作用との関連のなかで理解することが重要になってきた。

以上のような現況をふまえ、本演習では、反応拡散系に対して、反応系の外部から強制を加えた場合にその反応系がどのような振る舞いをするか、を2つの実験的アプローチで考察することを試みた。1つは具体的な数理モデルの数値解析、もう一つは反応拡散系の化学反応に対して実際に外的強制を加えた時の反応系の応答を定量的に調べた。

これらの実験主題を以下に述べる。

partA. 神経伝達の発生と伝播に関する非線型微分方程式の数値解析による考察

神経興奮の発生と伝播に関する電気現象を記述する現象論的方程式であるところのFitzhuguh-南雲の方程式とそれに準じた型の方程式をとり扱った。これらの数理モデルに対して様々な強制項を付加したときの振る舞いを数値解析することにより、その挙動の特質を考察し、理解を深めることに主眼を置いた。

partB.BZ反応の光応答に関する実験的考察

マロン酸を基質とする酸化還元反応であるBZ反応に対し、「光」という外的な刺激を強制作用として照射し、その反応溶液中の物質濃度を外的に変化させてやって、その後の反応を主に「時間的」側面から定量的に観察した。この実験を通して確認できた最重要な点は、BZ反応に光を照射すると、反応の波が減速していって終には静止し、さらに光を照射することにより、反応の波が消える、ということである。照射光の光量を調節することで反応の波を静止させることを定量的かつ技術的に可能にすれば、この現象は工学的な応用にも発展させることが期待できる。

以上の2つの実験を通して、実質的な我々を取り巻く環境世界において実に数多く見られる非平衡解放系の現象をより深く理解し、その時間的空間的発展の挙動に対する具体的実感を体得した。これらの実験に関しては、それぞれ分離して以下にまとめられている。

概要(この文書): kadai00.pdf (19.7KB)

part A 神経伝達の発生と伝播に関する非線型微分方程式の数値解析による考察: kadai0A.pdf (1.16MB)

part B BZ反応の光応答に関する実験的考察: kadai0B.pdf (19.7KB)

付録1: furoku1.pdf (2.70MB)

付録2: furoku2.pdf (60.8KB)

今回の演習を進めるにあたり、貴重なアイデアを与えて頂いた吉川教授、並びに多大なる助言を頂いた大学院生の元池氏、一野氏、友人の花井亮氏、その他、実験、解析に必要な各種器具に関する説明をしてくださった研究室の方々に厚く御礼申し上げる。

最後に、本実験、ならびに考察を行うにあたり、参照した文献を以下に列挙する。各著者の方々に対し、深く感謝の意を表する。

参考文献

1)北原和夫、吉川研一、非平衡系の科学1、講談社(1994)

2)三池秀敏、森義仁、山口智彦、非平衡系の科学3、講談社(1997)

3)特集「非線型解析の世界」、数学セミナー、日本評論社、1999年6月号

4)JIS 光学用語、日本規格協会(JIS Z 8120 - 1978)


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