セルオートマトン探訪

畦柳 竜生

3月某日





第1章 セルオートマトンモデルとは

 偏微分方程式や代数方程式など物理現象を記述する方法は多岐にわたる。とりわけわれわれが親しみを持っているのは偏微分方程式であろう。ニュートンの運動方程式、Maxwell方程式などはその代表である。これらの方程式は変分法などさまざまな数学的技巧とあいまって数多くの物理現象の記述を可能にしている。しかし、裏側でその有用性、美しさを保存、特にエネルギー、運動量の保存といった保存の概念である。
 ところが比較的新しい分野である非線型の世界ではこれらの概念が(少なくとも部分的に)崩壊するケースが見られ、現象を記述すると予想される方程式の解を具体的な形で得ることが不可能な場合がある。しかしその一方で非線型現象はパターン形成をはじめとして、従来の物理学では予想しがたい美しさをわれわれに提示してくれる。その際、理論の解析において多大な有用性を持ってくるのがコンピュータである。その役割は、誤差に関する理論に裏付けられた近似である。また、非線型現象の一分野である可積分系の研究でも−さまざまな変換などにより具体的に解が求まる場合でも−歴史的に見ても、ソリトンの発見の一端にはE.Fermiらによる数値実験の貢献があり、今日では非線型現象とコンピュータの関係はきっても切れないものとなっている。
 一方で、偏微分方程式の議論とは独立にパターン形成の議論と深く結びついた、コンピュータを用いたモデルとしてセルオートマトンと呼ばれるものがある。このモデルは極めて単純ないくつかの変換規則のもとでの状態、パターンの変化を調べるというものである。その歴史は古く、原爆開発中のロスアラモス研究所ではJ.フォンノイマンがライフゲームと呼ばれるセルオートマトンを考案し、研究者たちは休憩時間になると、単純なルールから多様なパターンを作り出す、ある意味物理らしいこのセルオートマトンで遊んでいたという話もある。
 本レポートでは、Belouzov−Zhabotinsky反応(以下BZ反応)およぴソリトンのセルオートマトンモデルについての概要をまとめるとともに、課題演習中に筆者が考案したアイディアについて説明する。




全文: azeyanagi.pdf (664KB)


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